根室のカリスマ【無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語】
『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』を観た。
私はプロレスが好きで長年見続けているが、おもちゃ箱のようなエンターテインメントだと思う。キャラの立ったプロレスラーが華麗な技を繰り広げたり、レスラー同士でドロドロな人間ドラマが見られたり、若いレスラーから未来を感じる瞬間と出会えたり、見れば見るほどその奥深さを知らされる。
プロレス団体は大小問わず日本各地にあって地方を盛り上げている。この映画は根室を拠点として活動するアマチュアプロレス団体、新根室プロレスに密着したドキュメンタリーだ。新根室プロレスといえば、戦う巨大パンダ、アンドレザ・ジャイアントパンダがSNSでバズったことでプロレスファンから認知された団体というイメージが強い。「無理しない ケガしない 明日も仕事!」という団体のキャッチフレーズからも理念を感じられる。
このドキュメンタリーでは団体の創始者であるサムソン宮本にスポットライトが当てられる。アンドレザ・ジャイアントパンダのブレイクによって、ようやく団体が軌道に乗り始めた矢先に病魔がサムソンを襲い、代表として新根室プロレスの今後に対して重要な決断を迫られる。
このサムソン宮本という男がプロレスを心から愛する生粋のエンターテイナーだということが、団体のプロレスラーへのインタビューや新根室プロレスの興行から伝わってくる。ときには家庭に大きな迷惑をかけてしまう男であるのも人間臭い。アンドレザ・ジャイアントパンダが顔役だからなのかもしれないけどサーカス団のようで、暗い人生を歩んでいた人たちをサムソンは新根室プロレスの一員として巻き込んで光を授けていったことが伝わってくる。
サムソン宮本が団体に対して下した決断を経て、ドキュメンタリーの終盤はその後の新根室プロレス所属選手にスポットライトが当てられる。子供の頃に新根室プロレスの興行を見て、入団を志した若手のエースTOMOYAに対してサムソンがある仕掛けを施すのだが、ここでサムソンのカリスマ性が際立つ。この人は本当にプロレスが好きで、仲間が好きで、それでいながらサプライズの入れ方が凄まじい。プロレスにすべてを捧げたサムソン最大の仕掛けに思わず胸が熱くなった。
強さや身体能力のすごさだけがプロレスじゃない。北海道の片隅にカリスマが立ち上げたハートフルな団体があったなんて、だからプロレスは見れば見るほど面白いんだ。入場特典でもらったサムソン宮本ステッカーを神様のように財布の中に入れた。