砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

むっちゃのくっちゃ【バビロン】

『バビロン』を観た。

 


www.youtube.com

 

時の流れに身を任せていたら2023年になっていた。日本ではテレビ放送が始まってから70年の節目になるらしい。もうひとつのオールドメディアであるラジオはもうすぐ100年。まだまだ先鋭的なものだと思ってきたけど、人間ひとりの生涯ぐらいの歴史が存在する。ちなみに約100年前のアメリカでは大きなメディアであった映画で革新が起きていた。その栄枯盛衰の様子を描いた映画が『バビロン』だ。

 

『バビロン』とは古代に繁栄した大都市の名前。ここで描かれる『バビロン』とはハリウッドのことだ。1920年代後半のハリウッドはすでに映画の中心地だった。その模様が描かれる冒頭の宴のシーンは狂乱しまくっている。セックス、ドラッグ、ロックンロールは生まれてないから、その当時はジャズ。そして、象。象!?酒池肉林という言葉がとっても似合う冒頭のシーンは圧巻で、様々な人々が大騒ぎしてはしゃいでいる。100年前の人達にとってのコンプライアンスは何に当たるのか聞いてみたい。

 

そんな隆盛を極めるハリウッドに大きな変化が訪れる。それは音だ。今までサイレント映画が主流だったのに対し、技術革新により俳優のセリフや、生演奏など、トーキー映画が徐々に人気を得だす。ゲームチェンジャーが現れたことにより、無音の演技で良かった俳優たちは、セリフによる演技力を求められることになる。ブラッド・ピット演じる往年のスター ジャック・コンラッドや、マーゴット・ロビー演じる新進気鋭の女優 ネリー・ラロイは徐々にその時代の波に飲まれていくことになる。

 

サイレント→トーキーの時代以降を描いた映画は『雨に歌えば』など過去にも存在するので、どうしてもベタな展開があるのだけども、華やかなエンターテインメントに隠れた人間関係の問題、製作中の事件、事故がなんだかおかしく見えてくる。テクノロジーに振り回されながらもいい作品を作ろうとするプロの魂がそこにはある。そんな血のにじむような労力をしたのだから馬鹿騒ぎしたくなるのもわかる。

 

光り輝くハリウッドだけど、光には影が付き物で、とある事件をきっかけに影の部分が徐々にとある登場人物に襲いかかる。今まで観ていた話とガラッと変わる展開がやってくるので、逃げようにも逃げられない。まさしく闇のようなシークエンスだった。あんな闇には飲み込まれたくないけども、次の日の太陽を見れるならば、狂乱の世界の一夜ぐらい溺れてみたい。