安心ゴジラ【ゴジラ-1.0】
『ゴジラ-1.0』を観た。
安心したい気持ちはいつだってある。定食屋に食べ慣れているメニューがあるだけで不思議と安心するものだ。そんな感覚は映画館にもあるような気がする。たとえば新宿TOHOシネマには、いつだってゴジラ作品を上映しててほしい。新宿に言えばゴジラがやっているというだけでどんな悪いことがあった日でも安心できる。作中の人々は恐怖で夜も眠れないというのに。
ちょうどゴジラシリーズの最新作『ゴジラ-1.0』が新宿TOHOでやっているというので、安心した気持ちで観に行った。ゴジラが睨みを利かす建物の中でゴジラを見れるというだけでワクワクする。
タイトルの「-1.0」とは、作中設定の戦後=ゼロの状態の日本に、ゴジラが襲来することによってマイナスの状況に追い込まれるという意味らしい。最悪の状況に最悪の状況が積み重なる中でどうやって生き抜くのかという話である
主人公・敷島を演じるのは神木隆之介。特攻兵だったが、特攻をする直前に怖気づいて、機体のトラブルと嘘をついて大戸島の基地に着陸した敷島は、その島に駐在していた整備兵とともに得体の知れない巨大な生物の襲撃に遭う。その島でゴジラと呼ばれる怪物から命からがら生き延びた敷島はその後、東京に戻って生活を開始する。
冒頭からいきなりゴジラが画面に登場して、テンションがさっそく上がるけども、その後は朝ドラパート。特攻できなかった後悔を抱えながら絶望しかない敷島の前に浜辺美波演じる典子が転がり込んできたり、仕事仲間が出来たり、人間ドラマが展開される。復興の「ふ」の字が見えて、敷島に生きる希望が芽生えはじめたときに、あいつがやってくるのである。
そのゴジラを倒そうとなるのだが、国際的には冷戦が始まりつつあり、アメリカの力は借りられない。民間の力だけで対抗しなければならない状況に陥る。ここからなんとなく日曜劇場感が立ち上っていく。残された有志たちが日本の唯一の希望で、科学の力や企業努力を駆使したゴジラの攻略法を実践する。
怪物映画でありながらも、人と人のつながりや日本人としての団結力の素晴らしさを伝える脚本の上で我々の感情は転がされまくりだ。これぞ新宿TOHOシネマで見る大衆映画だ!とポップコーンをバリボリ食べながら満足して帰った。やっぱり映画館だね!