砂ビルジャックレコード

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ニューヨークはまだ遠く(『オン・ザ・ロック』観たマン)

オン・ザ・ロック』を観た。


名コンビ再び!ソフィア・コッポラ監督×ビル・マーレイ『オン・ザ・ロック』予告編

 

映画を見ていると、「この場所に行きたい!」と思う瞬間が多々ある。さすがにこのご時世、海外のロケ地はGoogle Mapでオンライン観光することでしかできないが、日本国内ならまだなんとかなる。好きな映画なのに行けていないロケ地個人的第1位は『ロスト・イン・トランスレーション』に出てくるバーだ。調べてみると、新宿のニューヨークバーという場所のようだ。電車で行ける距離に住んでいるんだから行ったらいいじゃないと思う声もあるが、私自身バーに行った回数も数えるほどだし、お酒もあまり飲めないし、そして、紳士淑女性と色気がドレスコードに思えるニューヨークバーに入る資格がないと、自粛している。

 

そんな『ロスト・イン・トランスレーション』のソフィア・コッポラ監督がビル・マーレイをメインキャストに据えた新作がApple TV +での配信とともに、劇場で公開されるという話を聞いた。しかも、個人的に好きな映画会社のA24がいっちょ噛んでるもんで、そんなん言われたら行くしかない。ほとんどストレンジャーがいなくなってしまった東京を縫って映画館にたどり着いた。タイトルは『オン・ザ・ロック』。題名から漂う大人の香り。

 

舞台はニューヨーク。ローラは、仕事で忙しい旦那・ディーンの浮気を疑いはじめる。調べれば調べるほど、疑心暗鬼になっていくローラ。その疑惑の真相を晴らすために、力を貸してくれるのが父親のフェリックス(ビル・マーレイ)だ。フットワークが軽く、プレイボーイであるフェリックスとの父娘2人での尾行調査は波乱の連続。果たして、浮気疑惑の結末はどうなる?

  

ローラとディーンの夫婦間のすれ違いも、この映画で描かれているが、私としてはとにもかくにも、おちゃめなプレイボーイ、フェリックスのキャラクター性に魅了された。ビル・マーレイが演じる、渋さと軽さを両方兼ね備えた最強のおじさんが、オープンカーに娘を乗せて東奔西走する姿がどこか愛くるしい。(そして、それに振り回されるローラも最高である)個人的に好きなシーンは、ある警察官とのくだりだ。ピンチの場面なのだが、フェリックスの人柄が大炸裂する。

 

あいにくプレイボーイとしての才能は皆無の私にとって、フェリックスの人当たりの良さは憧れのその先にあるものだ。老けたら子供を載せてオープンカーでニューヨーク市街を駆け巡りたい。でも、ニューヨークはまだ遠い。まずはニューヨークバーから”ニューヨーク”に慣れるべきだ。ただ、そこもまだ遠い。ならば近所のバーで練習して力をつけよう。バーがだめならせんべろに行ってみよう。ロックが強けりゃソーダ割りから始めてみよう。