砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

2分も86分もあっという間【リバー、流れないでよ】

『リバー、流れないでよ』を観た。

 


www.youtube.com

 

なにかのウェブサイトで見た情報だが、日本人が1分間に読める文字数はだいたい400文字〜600文字らしい。文章を読んでいるときに時間を意識したことなんて国語のテスト以降めっきりないのだけど、そう言われたらそうなんだろう。400文字ということはX(formerly Twitter)でいえば3ポスト程度。かなりの情報量を1分間に取得していることになる。特に一文字一文字の情報量が多い日本語だと、より濃密な情報が羅列しているということだ。

 

とはいえ、時間なんてあっという間だということが『リバー、流れないでよ』を見ると痛感する。舞台は京都の貴船にある老舗旅館。主人公である仲居のミコトが川に向かって物思いにふけているところから物語が始まる。旅館の業務をいつものようにこなしているが、とある時に冒頭の川に戻ってしまう。デジャブなのかと疑問に思いながらも、仕事を始めるミコトだったが、やっぱり元に戻っていることに気づく。その現象はこの旅館にいる全員が感じている異変であった。宿泊客も女将さんも2分間のタイムリープを繰り返す。

 

2分間のタイムリープの中で旅館の人々は、このタイムリープからの脱出を目指し旅館中を駆け回る。時間は戻るが、そのときの記憶はなくならないので2分間で試行錯誤しつつ、少しずつヒントを集めながらタイムリープの原因を探す。2分間スパンだからなのか、途中で登場人物もタイムリープを受け入れはじめる。「わたし初期位置あそこなんで」「それじゃ次のターンで試してみましょうか」と、冷静に脱出への戦略を練る彼らがおかしいと同時に頼もしく見える。

 

かといって全員がタイムリープからの脱出をのぞんでいるわけではない。締め切りに追われる小説家は、このタイムリープの中にいれば永遠に締め切りが来ないから現状維持をのぞむ。物は元に戻るから、破壊行為も試してみたくなる。そんな人もいるわけで、ひとつになりそうでならない。

 

なにかのウェブサイトで見た情報だが、日本人が1分間に読める文字数はだいたい400文字〜600文字らしい。文章を読んでいるときに時間を意識したことなんて国語のテスト以降めっきりないのだけど、そう言われたらそうなんだろう。400文字ということはX(formerly Twitter)でいえば3ポスト程度。かなりの情報量を1分間に取得していることになる。特に一文字一文字の情報量が多い日本語だと、より濃密な情報が羅列して、、、あれ、こっちの文章ももタイムリープしてる?2分経ったのかな?すいません、どうやら時空の狭間に入ってしまったようで。。。

 

2分間を繰り返すうちに人間関係にも歪みが生じてきたり、ラブストーリーがあったかと思えばサスペンスも起きるし、次々と飽きさせない展開が生み出されていく。86分間の映画とは思えないほどの話の密度だ。物語が進むにつれて、タイトルの意味も判明する。時間を巻き戻せたらいいのに、時間が進まなければいいのにという誰しも人間が思う感覚に触れながらも、タイムリープからの脱出に向けて一致団結する貴船の人々の行動に心がグッとくる。舞台となった貴船の旅館も風情が溢れていて、一度泊まってみたくなる。その一泊の日にタイムリープが起こることも期待して。