砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

調べないで、そんで見てから調べて(『アンテベラム』観たマン)

『アンテベラム』を観た。

 


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withコロナの時代になって、世の中が徐々に変化している。自分自身としては、環境の変化に合わせてどんどん新しい世の中になればいいと思っているし、(変化を楽しむぐらいがちょうどいい)アップデートするのが現在を生きる人間としての務めだと思っている。時代に根っこを張って動こうとしない結果、立派な大木になってしまう人たちを見るとどうしても気になってしまうのだ。昔を否定するつもりはないけど、「昔だから」で良しとするという考えは間違っている。

 

『アンテベラム』は、南北戦争前の南アメリカの風景を描いたワンシーンから物語が始まる。そう。アメリカの歴史。世界史で学んだような南アメリカの日常がなぜかのどかに描かれる。軍人、綿花、そして黒人奴隷。この映画の監督インタビューで『風と共に去りぬ』はホラーだと言っていたが、美しい世界観の中で奴隷たちを待ち受ける展開はまさしく地獄のようだと思う。

 

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その当時の南アメリカの奴隷の日常を描いた物語と思いきや、突然、別の話が始まる。鳴り出すスマートフォンに主人公が気づく。現代のアメリカに舞台が移り、社会学者としてバリバリに活躍する黒人女性の主人公が、出版パーティを開く話になっていくのだが、なんだかドキドキしてしまう。さっきまで見させられていた「アメリカの過去」がどうしてもちらつく。

 

不思議な構成で物語が進んでいくが、この映画に関するヒントを見たことない人に話せば話すほど、見た時の脳汁の射出量が少なくなってしまいそうで難しい。人類を、『アンテベラム』を見た者と見ていない者に分けてしまうほどの衝撃的な展開が待ち受けているのだよ。

 

ヒントを出すとすれば、冒頭に映し出されるアメリカの作家フォークナーの一文だ。

「過去は死なない 過ぎ去りさえしない」

この言葉の持つ意味が、この映画の世界全体を覆っている。(私達が住むこの世界もこの言葉が覆っているかもしれないけど)果たして『アンテベラム』はどのような映画なのか、その答え合わせは、あなたの目で確かめてほしい。確かめたら『アンテベラム』とは何なのか、あのシーンはどういうものなのか、など色々と調べたくなるはずだ。その行為が今をアップデートさせるひとつの近道になる。