『ブラインドスポッティング』を観た。
バディムービーが好きだ。主人公2人の関係性にニヤニヤしつつも、2人が力を合わせて敵に立ち向かう姿や、ゴールへ足並みを揃えて向かう展開に心を動かされる。今年の作品で言えば『グリーン・ブック』に『名探偵ピカチュウ』に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』もバディムービーだ。仕事仲間でも、白人でも黒人でも、人間とポケモンであっても、絆が生まれれば応援したくなる。
この『ブラインドスポッティング』もバディムービーのひとつだ。舞台はアメリカのオークランド。ここの幼馴染である黒人のコリンと白人のマイルズが主人公だ。あと3日で1年に及ぶ指導監督期間が終わるコリンは、その夜、引越し業者の仕事の帰りに白人警官が逃げる黒人の青年に銃を連射する場面を目撃してしまう。そこから物語が徐々にうねり始める。
まず、バディのコリンとマイルズの対比が非常に興味深い。黒人で、指導監督期間中なために真面目な生活態度、まだ関係のある元カノはヨガや青汁などが好き、そんな特徴を持つコリンに対し、マイルズは白人で悪ガキ気質、体のあちこちにはタトゥーがあり、奥さんと娘がいる。新しくできたヴィーガン用のハンバーガショップにブチギレたり変わりゆくオークランドに対して悪態をつきながら生きている保守的(穿った見方をすれば時代の変化を拒絶している)な考え方の持ち主だ。
アメリカやオークランドの抱える社会問題をちらつかせながらも、人種も立場も考え方も違う2人がすれ違っていくのが見どころだ。黒人青年の射殺事件をきっかけに、未だに土地に残る差別意識や習慣がコリンの目を通じて、観客に届けられる。この『ブラインドスポッティング』とは盲点のこと、白人側から見る世界と黒人側から見る世界には、それぞれ見えない部分が存在しているということだ。ときに絆はコリンとマイルズを苦しめたりする。
黒人と白人の社会問題を描いた作品は数あれど、本作のユニークな点は時折セリフがラップ調になるところだ。私はそこまで英語のヒアリングはできないけど、明らかに韻を踏んでるなということは理解できた。コリンとマイルズがラップで言葉遊びしながら街を練り歩くシーンは微笑ましいし、物語の軸となる黒人青年射殺事件がクライマックスを迎えたときに、衝撃的なカメラワークとともにはじまる魂のラップは、数ある映画のラップシーンの中でもベストに入るものだと思っている。本当は日本語字幕の上に英語字幕でもいいから載せてほしかった。ヒアリングも頑張るけど速読も頑張るよ。はやくNetflixで配信されるのが楽しみな作品である。