すごいよいゴス【パール】
『パール』を観た。
家族は小さな呪いだ。子供の頃から、環境や教育による呪いを常識として押しつけられ、社会に出るとそれが呪いだったと気づく。家族によっては弱い呪い、強い呪いがあると思うけど、その呪いの解き方や付き合い方がわからないために苦しんでいる人もいる。
『パール』の主人公はタイトル通りパールという農家の娘で、作中の彼女の苦悩の姿を見ると、呪いに翻弄されていると感じた。この『パール』だが、3部作の2作目で、以前に公開された『X』という話の前日譚にあたる。『X』ではイカれた老婆として登場したパールが、なぜイカれちまった(漫画の吹き出しなら中黒で強調している)のかが本作で明かされる。
パールは映画の華やかな世界に憧れている少女だが、病気の父親と厳格な母親のいる家庭に抑圧を感じている。そんな中、ある事件をきっかけにパールの抑圧が解放されていく。全体を通して、昔の映画のような演出で話が進んでいき、レトロかわいい部分があるのだがそんな世界観の中だから残酷な描写が、より異質に、ショッキングに映る。
『X』ではマキシーンと老婆パールと一人二役を演じていたミア・ゴスが、本作でも若年時のパールを演じている。『X』の二役とはまた違った魅力が存分に発揮されている。特にパールに秘められた狂気が顕になってからの演技はえげつない。あんな人物に出くわしたら逃げたくなるような言動なのに、どうしても惹きつけられてしまう。それでいて、この映画の脚本にも関わっていて、エグゼクティブプロデューサーもやっているそうで…ゴスすげえな。
自分を解放したパールはどんな人生を選択したのか、エンドロール寸前の1秒まで、いやエンドロールまで見逃してはならない傑作であった。『X』を未見の人は連続で見てほしい。(『X』もだいぶ狂っているのでおすすめ。)そして、3部作のラストとして予定されている『MAXXXINE』もとても楽しみである。