砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

そういう研修VTR(『ガンズ・アキンボ』観たマン)

『ガンズ・アキンボ』を観た。

www.youtube.com

 

ある特定の人達に最低限のルールは守って欲しいときに研修は行われる。私も、この人生の中で何度となく研修をしてきた。記憶の中にある初めての研修は、小学生の時に受けた交通安全の研修だったと思う。成人になればなるほど、研修を受ける回数は増えていった。マナー研修、挨拶研修、コンプライアンス研修、研修の鎧を身に着けた私はとうとう社会人と呼ばれるようになった。

 

そんな研修の鎧をまとえば防御力が完璧かと言われればそうではない。ふとした気の緩みから一撃で葬られてしまう場がある。衆人環視下のインターネット世界だ。『ガンズ・アキンボ』の主人公であるマイルズは、この気の緩みがきっかけで、とんでもない1日を過ごすことになる。お酒を飲んで、仕事ができない腹いせに、殺人バトルの闇サイトに、クソリプを送り、管理人とリプ合戦になったのが運の尽き。IPアドレスが特定され、ただの炎上野郎が犯罪者だらけの殺人バトルに巻き込まれてしまった。しかも両腕は改造され、手先が拳銃に。コブラだって片手だけだぞ。

  

この両手拳銃男を演じるのはダニエル・ラドクリフ。突然角が生える男をやったり、東急ハンズに売っててほしいマルチな活躍をする死体をやったり、端的に言えばやべえ役者だ。こうやって、立て続けにおかしい役が続いていくと、魔法丸メガネまでもぶっとんだ役に見えてくる。ただ、ぶっとび方の飛距離が遠くなればなる方が、ダニエル・ラドクリフの魅力が輝くのもまた事実だ。

 

殺人バトルの対戦相手は完全にイカれちゃってる女殺人鬼ニックス。ナイフにマシンガンにロケットランチャーになんでもござれ。この闇サイトのスター選手だ。ほぼ素人vsチャンピオン級。視聴率狙いの全盛期PRIDEを想像させる結果が見え見えのマッチメイクが組まれている中、マイルズはどう挑むのか。そして、生きて帰れるのか。

 

自分がマイルズになったら、と、想像する(すぐに想像をやめた)。だって、両手が拳銃になっているのだよ。シザーハンズをこえる不器用さ。スマホも上手に扱えなければ、ズボンを脱ぐのも難しい。なんせ、ふとした拍子に引き金を引いてしまったら待っているのは人生の終わりだ。唯一アドバンテージをとれるのは、ダンディ坂野のモノマネとソナチネのモノマネぐらいだ。

  

設定がぶっ飛んでいるという大フィクションということはわかっているけど、この闇サイトでの戦いに盛り上がっている観衆のカットを考えると、自分がこの『ガンズ・アキンボ』の世界の住民と、そう遠くはない世界にいることに気づいてゾッとした。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆同士、阿呆ということに気づいていないのだ。炎上している張本人にどんな結末が訪れるか、傍観者のくせに楽しみにしている。物語が終われば、次の火災現場に向かう私たち。なんんだか似たような記憶があるぞ。派手なバイオレンスアクションはすっきりするけども、どこかモヤモヤ反省したくなる映画だ。これはいい研修VTRだ。

 

ということで、この『ガンズ・アキンボ』という研修VTRから学んだこと

①闇サイトにむやみにアクセスしない

②酔っ払った状態で、実況コメントを送らない

③傍観者だって加害者になりえる

 

日々、鎧を厚くしていかなきゃいけない。