『エイス・グレード』を観た。
Eighth Grade | Official Trailer HD | A24
時の流れは恐ろしい。2019年である。もう”21世紀”という言葉自体にも新しさがなくなってしまった。週刊誌で水着を掲載しているグラビアアイドルの小さい文字で書かれたプロフィールを読むと、たまに2000年以降生まれでクラクラする。自分の時間感覚と裏腹に世の中の時計はきちんと進んでいることに複雑な気持ちになる。
文明の流れは恐ろしい。『エイス・グレード』はタイトルの通り、8年生(=日本で言えば中学2年生)の少女・ケイラが主人公の物語である。当たり前のようにスマホとSNSを駆使している。私だって大まかに区分すればデジタルネイティブ世代なのに、隔世の感。知らんだろ、二つ折りの携帯電話のボタンの手触りを。知らんだろ、赤外線で連絡先を教えあった瞬間を。知らんだろ、着うたが出てきた時の衝撃を。
学校って恐ろしい。つくづくアメリカ的なスクールカーストの映画を見ると胸がキュッとする。ケイラは内気な女の子で容姿もイケてない。過保護なパパとの二人暮らし。ひょんなことから、スクールカースト上位の女の子のお誕生日会に出席することになってしまった。大人の付き合いとも割り切れない年代のイベントだし、地獄としか言いようがない。
SNSって恐ろしい。ケイラは商店街でものを買い揃えるかのように、Instagram、YouTube、Tumblrを駆け巡る。そして自分のYouTubeチャンネルを持っている。自分の日々の出来事を話しているのだが、いかんせん誰も見ていない。多感な時期の底辺YouTuberは辛い。結果として、このYouTubeの撮影風景がケイラの内情を示すモノローグとして機能していく。
若さって恐ろしい。ケイラは今の自分に打ち勝とうとしている。その勇気ある行動はかっこいいものではなく、見ているこっちも恥ずかしくなってしまうものばかりだ。でも、その恐ろしい行動をチラ見しながら、ケイラの小さな冒険の行方を応援したくなる。この小さな冒険って我々が通ってきた道なんだよね。自分で撮ったYouTubeを見てアホらしいって笑い飛ばせる未来のケイラを期待した。