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呪われた一族【アイアンクロー】

『アイアンクロー』を観た。


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その痛みを容易に想像できるという点ではアイアンクローという必殺技は理想的だ。己の強靭な握力を生かして、相手のこめかみを掴んで、リンゴのように潰そうとする。この単純明快な力技に「アイアンクロー」と名付けたのもかっこいい。もう片方の手を、握る方の手首に添えているのも趣がある。おそらくリアルタイムで見ていた父親にかけられたし、技名を覚えてからは小学校で実践してみたりしていた(子供の握力では全く意味がない)

このアイアンクローの使い手が伝説的なプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックという男で、彼の息子たちもプロレスラーになる。『アイアンクロー』は、このエリック家の数奇な人生を元にしたドラマだ。

自分はプロレスが好きで、フリッツ・フォン・エリックやエリック家が「呪われた一族」と呼ばれていることも知っているが、あくまでもWikipedia上の情報に過ぎない。プロレスに興味を持つ前に起きた出来事だから、映像で歴史を勉強しているような感覚でもあった。

作中には、エリック家以外のプロレスラーも対戦相手などで登場していた。ここで自分が知っている選手が出てくるとテンションが上がる。ブルーザー・ブロディやリック・フレアーとか、それぞれのレスラーのクオリティも高い。当時のプロレス中継の雰囲気を感じ取れるのも好きだ。アメリカのケーブルテレビで放映されていたプロレス中継の、レトロフューチャーなテロップだったり、ヘッドホンをつけたアナウンサーの名調子などリアルタイム世代でなくてもわくわくする。

「呪われた一族」という異名が、ついていることからわかるようにエリック家を待ち受けている運命は壮絶だ。一方でエリック家の息子たちにも、プロレスラーであることを望まれる呪いみたいなものも降り掛かっていく。顛末を知っているから、少し見たくない部分はあったけどもその事実を過度に脚色せず、淡々と描いているのが好きだ。