砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

How to be in 懐(『女王陛下のお気に入り』観たマン)

女王陛下のお気に入り』を観た。


『女王陛下のお気に入り』日本版予告編

 

現代においてモテるための努力のうち最も簡単な方法、それは「異性の本音」という社外秘と言っても過言ではないテキストをなんと無料で掲載しているサイトを熟読することである。

 

私は女性心理が全くわからないわけで、電車移動の合間にそっとそういうサイトを閲覧しては「話は最後まで聞いてあげる」「目は2秒以上見つめながら話す」「弱音を吐いているときは心をひらいている。チャンス!」「連絡を急かさない」というものを興味深く読んでは、聖書のように心に刻んでいる。そして、実戦の機会が訪れてやってみるんだけども、結局は負け試合。私は2人分のお会計を支払い、おつりの小銭を甲子園の砂のように集めて帰るだけだ。

 

ああ、私も意中の人を狙って落とすような才を手に入れたい。欲を言うなら恋愛だけでなく、なんらかの権力を持った人物の懐にもぐりたい。そんなことをいとも容易く達成する女がいた。『女王陛下のお気に入り』に登場するアビゲイルだ。

  

この映画の舞台は、18世紀初めのイングランド王室。アン女王政権下で、フランスと戦争中。側近のサラが実質的なフィクサーとして君臨していたが、そんな最中、没落した貴族の娘のアビゲイルが現れ、王室の召使いとして働き始める。アビゲイルはある事件をきっかけにアン女王の"お気に入り"の階段を歩み始める。監督は『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモス。気品がありながらも、魔物に見守られているような空気感に飲み込まれそうになる。

 

takano.hateblo.jp

 

とにかくアン女王とサラ、アビゲイルの女性たちによる三角関係がえげつない。歴年の女王とのリレーションシップはあるものの、その絆をいとも容易く塗り替えてくるアビゲイル。イラつくサラをあざ笑うかのように、アン女王と二人の濃厚な時間を過ごしてしまうアビゲイルサイコロジー。選手権者とチャレンジャー。これはアン女王の懐をかけたタイトルマッチなのだ。そのアビゲイルを演じるエマ・ストーンの小悪魔っぷりったらもう。こうやって権力の中枢に入るのか、はあ〜〜〜勉強になります。

 

と、サラとアビゲイルバチバチやっているのだけども、もう一方でアン女王の孤独も描かれている。パーソナリティーを愛されているのかオーソリティーに集っているのか、翻弄されるアン女王の叫びになんだか胸が苦しくなる。懐にお邪魔される側の気持ちもしっかり考えなければならない。その答えはスゴレンなんかに書いていなかったんだ。