ある日、外でお昼ごはんを食べていたときのこと。隣のテーブルに、おそらく女子大生と思われる2人組がいた。料理が女子大生のテーブルに到着してから、そのうちの1人の発言に、私は突如、思考の渦に巻き込まれてしまった。
「私、最近撮る前に食べるクセついてるんだよねー」
???
素敵な料理を見れば思わず写真を撮ってしまいたくなるのは現代人間の性だ。だってカラフルだもん、かわいいもん、和食だってしぶいもん。それが気になったのではない。彼女の中で、「料理を撮る」>「料理を食べる」という価値観になっていることに驚きなのだ。
TwitterやInstagramにアップし、世界とコミュニケーションする、あわよくば承認欲求を満たすことを第一としている感覚を持っているのだろう。そのマズローピラミッドを嘲笑うような順位付けが、聞き手のもう一人も同様のものを持っているかのような言いっぷりなのが面白い。個人的な価値観ではなく、集団としての価値観だ。果たしてこの女子大生たちは、喉が渇いたときや、危険にさらされているときでさえも、同様のことをするのだろうか。アメリカの狂ってるほどに頭のいい大学で実験してほしい。
とはいえ、食べる前に撮る(胃腸薬のCMみたいになってるけど)という順序自体は非常に正しいと思う。SNSを見ていて、「こいつやべえやつだ」って思うのは食べてから撮った写真をアップしているやつだ。食べかけの料理を見せられても気持ちのいいものではない。もう欲求が渋滞していて脳内がパンクしてるんじゃないか。食べかけられたもので美しいものは、Apple社のロゴだけだ。
そして、先程の女子大生に言いたいことがある。料理を撮る前に食べるのはクセではない。本能だ。