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オオネストロングスタイル『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』観たマン

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』を観た。長え。

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思春期に観た奥田民生のMVに衝撃的を受けたのを覚えている。生意気にも十数年生きてきてある程度の音楽を聞いてきたつもりであったが、なんというか“塩で音楽を食う旨さ”を提案してくれたのが奥田民生であった。絵本の文章のような歌詞かと思えば重厚なギターサウンド。歯を治しにいかねばならない義務感さえかっこよくなる男ってなんなんだよ。そんなわけで、私も見事の“奥田民生になりたいボーイ”となりました。

 

本作の主人公もふとしたきっかけで奥田民生のかっこよさを知る。(そのエピソードがわかる!)きっと、奥田民生になりたいボーイになったものは皆、それぞれ固有の出会いがあると思う。提案されるかっこよさをまんま受け取るより、己の中でかっこよさを見つける喜びを知ったというか。そんなOTボーイのコーロキを演じるのは妻夫木聡。一方、狂わせるガールが水原希子。(生まれはテキサス)

 

正直、原作も読んだ側から言わせてもらえば、水原希子はミスキャストで萎えるなあと思っていたのだが、ところがどっこい。完全なる“出会う男狂わせるガール”だった。オレゴンにある磁場がめちゃくちゃになる所ぐらいの狂わせるガールを演じきってみせたのだ。生まれはテキサスなのに。そういえば原作は『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』だったのに『奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール』と「」がつきました。もっと長え。

 

「と」が付くことで、OTボーイとDKガールは並立の関係のように思えるが、正しくは『奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール』と、「所有」したい欲望がひとつのポイントになるだろう。本作の大根監督の作品に、主に以下の特徴がみられる。

  1. 男性目線のボーイ・ミーツ・ガール
  2. ヒロイン役は、おじさんにも優しくしてくれそうなイメージの女優
  3. ブラック業務的なメディアという生業 
  4. リリー・フランキー

私はこの4点をオオネストロングスタイルと呼んでいるのだが、(他に特徴があればお知らせください)この原作の物語の雰囲気と、登場する男性陣の気持ち悪いがままの「所有」欲が、大根監督の作風に見事にマッチしているのである!これこそオオネストロングスタイル!素晴らしい乗りこなしっぷりである。

 

この作品で着目したいのは、観客が恥ずかしくなるぐらいキスシーンが多いことだ。え、そんなスパンでキスする?息もつかせぬキスシーンたち。そして、水原希子のキスがえぐい。下顎からすべてを受け止めるような口づけ方にゾクッとする。キスの仕方がアンダースローなのだ。なんなんだ。そういえば姓が「水原」ではないか!野球狂の詩!!

 

個人的には、妻夫木聡と同じ職場で働く新井浩文の、終盤での“ドラえもんのくだり”にニヤッとする。こういう、知識詰め込み層を狙い撃ちしてくる大根監督に私は抗うことなどできない。奥田民生になりたいボーイの私だが、こんな恋愛はしてみたく...否....チャンスがあれば沼にハマってみたいボーイだ。奥田民生のように力を抜くにはドラマティックな恋愛経験も必要な気がする。