『大怪獣モノ』を観た。
「特撮」という言葉にときめきを感じる人がいる。そのうちのひとりが私だ。そして「プロレス」という言葉にときめきを感じる人がいる。そのうちのひとりは私だ。そのふたつとも手に汗握るバトルドラマに大変興奮してしまう。この2つが充実している日本に生まれてきて本当に良かった。そしてそういう国だからこそこの『大怪獣モノ』という怪作が生まれたのだと思う。
全体的に蔓延する小道具的なボケは大体スベっていることは置いといて、なんといってもその特撮とプロレスの融合こそ、この映画の魅力だ。飯伏幸太、鈴木みのるという生粋の“プロレス力”の高い選手が怪獣を殴る!蹴る!投げる!飯伏のハイキックにグネる大怪獣モノの首にニヤニヤ。怪獣の“皮膚のゆとり”が打撃の威力を倍増させている。(そして飯伏の演技の違和感にもドキドキする)
こういう殴る、蹴るという無骨でシンプルな戦闘シーンこそ「昭和」の力なのである。「平成特撮」しか経験していない私からしてみたら、どうしても、CG演出、フォルムチェンジ、おもちゃ屋さんで買ってみたくなる武器こそが特撮というイメージなのだが、そんなのはチャラかった。男なら裸で戦いやがれというのが「昭和」だ。キャラクターの感情の機微なんかぶっ飛ばして、とにかく詰め込んで、すごい映像を喰わされる。それが「昭和」なんだ。特撮にリアリティなんてどうでもいいやと笑い飛ばしたくなる。
カメオ出演に毒蝮三太夫ら特撮レジェンドも出演しているなど“文脈”も語りたくなってしまうのもニクい。ああ私も将来的にはお年寄りの間で人気者になりたいなあ。愛のある「ババア」を発するには、相当の人生経験は必要だが。そのときが来るまで地底に潜って長生きしてやる。