砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

雑Wi-Fi

休日に読書や雑務をしたいのだけど、なんだか家では集中ができないとき、近所のスタバとかドトールに行って作業をすることがある。人から見られているという状況は絶大で、私は読書している人や、今月のお金のやりくりをしている人というセルフラベリングをすることで、集中して作業ができるのである。ある一定の時間までは。

 

集中力がふらっと消えて、周りの会話が入ってくる。人生の先輩たちが健康の話をしている。本を読まなきゃと思ってページを繰るが、もうさっきまでの自分には戻れない。自分の席の周りの様子が気になりだす。

 

自分の斜め向かいの人はPCで作業をしている。休日なのにお仕事中なのか、それともあの人は大学生でレポートをまとめているのか。別の机では、女性がなにか工作をしている。友達の誕生日用のアルバムでも作っているのだろうか。微笑ましい。お誕生日会が素敵な思い出になりますように。

 

いやいや、私は街の平和を見守りに来たのではない。読書をするためにお金を払って座っているのだ。雑念が私の邪魔をする。人生の先輩たちは、まだ健康の話をしている。

 

俯瞰した私が気づく。この状況、なにかに似ている。快調だったのにプツンと切れるこの感覚。勝手にWi-FiとつながろうとするiPhoneだ。iPhoneWi-Fiに好奇心旺盛なもんだから、こっちはいい迷惑な、あの感覚に似ている。絶対スマホでラジオ聞いていたら、Wi-Fi拾って止まるもん。

 

つまり、私はこのような公共のスペースにいたばかりに、他人の行動をWi-Fiとして受信してしまったのである。だけども他人であるからパスワードはわからずに、自分のWi-Fiマークが点灯したまま外から想像することしか出来ない。

 

素早くWi-Fiマークをオフにしたとて、別のWi-Fiが乱れ飛ぶこの空間では為す術もない。今さら、相席食堂を女の子にオススメしている男子大学生のWi-Fiなんて拾いたくないのに!人生の先輩たちの話題は、おすすめの保険に変わったようだ。

 

そんなことを考えていたら、iPhoneが勝手にWi-Fiを入れてしまうことも少し理解できてきた。完全に集中力の切れた私は「私はiPhoneと共通点がある」と、iPhoneのメモ帳に打ち込んでから、頼んだ飲み物を平らげるまでYouTubeの動画を見漁る。

 

空になったマグカップを返却して、店を出る。お互いFree Wi-Fiには気をつけようなと手のひらのiPhoneと誓いあって、液晶の再生ボタンを押した。一度もradikoが止まらずお家へ帰れますように。