砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

エアコンのリモコン

エアコンのリモコンがどこかへ行ってしまった。狭い部屋に暮らしているのに、1時間探しても見つからなかった。自分の無精さを恥じる。春になって、気候が落ち着いて、エアコンを使わない時間が多くなったから拗ねて消えてしまったのではないか。付き合っているけどそりゃ連絡とらないと駄目だよねと勝手にリモコンに人格をもたせて、ショックを紛らわせようとする。

 

しかし、春から夏に近づくにつれて、エアコンを作動できない暮らしは死活問題である。急いで、エアコンを覗き込み、型番を調べて、検索エンジンに打ち込む。すると、思惑通りエアコンのリモコンが売ってあった。しかも、このエアコンのリモコンは、どのメーカーでも対応可能だというのだ。世の中に一定数、私たちの関係と同じように、人間に愛想を尽かして消えていくリモコンがあることを知ったことが何よりの救いだ。

 

いつ夏日を迎えるか分からない時期だから、すぐにその商品を買った。元リモコンは小さいボタンが並んでいたけど、新しいリモコンはひとつひとつのボタンが大きくて、しかもライトが点くボタンもついている。らくらくリモコンだ。らくらくリモコンをエアコンに向け、押しっぱなしにする。どこの機種かあたりをつけるために手を変え品を変え、電波を飛ばしているらしい。親指が攣りそうになったところで、エアコンからピピッと音がなる。ペアリングが無事に成功し、今夏も無事に過ごせそうだ。

 

そういえば、この間、携帯を見たら99から始まる番号で、恐る恐る通話すると、物腰の柔らかい男の声。自分の仕事に関する質問だったので、淡々と回答していた。その時に私が「発生(はっせい)」という言葉を使ったのだけど、私の回答が終わると、電話の向こうの声は頷いたあとで、「『はっせい』じゃなくて『ほっせい』だからな、そんな漢字も読めないのかコラ!」と令和では珍しい恫喝に様変わり。夢の中の私は、変な地雷を踏んでしまったことが超パニック。鼓動がドクンドクンと鳴ったところで、それが夢だということがわかった。

 

びっちょり汗をかいた体をリモコンで瞬間的に冷ます。らくらくリモコンがなかったら悪夢死するところであった。腹が立ってパソコンで探してみたけど発生は「ほっせい」とは読まないみたいだ。どういうところからそんなイマジナリークレーマーを生み出したんだよ、俺の無意識。