兎にも角にも、今年も高レベルのM-1で本当に魂を揺さぶられました。この後に実施されるTHE Wの行く末がとてつもなく気になるところであります。
M-1の感想を書いたとき、何となく憂いていた私の予感が的中しちゃった感のあるTHE Wだが、取り急ぎ主音声のほうで放映を確認しましたので感想を書かせてください。
しかし、ほとんどのバラエティ好きがM-1を見て、ネタに対して目が肥えきっているタイミングでよく開催したなあという印象がある。有馬記念の後にマーメイドSを見せられても、そんな盛り上がれないでしょうよ。
ただ、こういうことも日本テレビの想定の範囲内であったのではないかと思う。というのは、M-1、キングオブコントで審査員を務めている松本人志を副音声に配置したということが証明している。つまり、ネタ順がどうのだ、ボケの回数が多いのだで議論したことのないライトな層向けを客層としたコンテストなのである。一般視聴者を審査員にしたのもそういう差別化のひとつと推測する。
一方でそんなんじゃ物足りないコア層は、副音声を楽しみましょうということだ。見事な層の住み分けである。そう考えると、M-1、キングオブコントという賞レースと比べること自体、もしかしたら間違っているのかもしれない。
その空気・雰囲気を象徴した場面はトーナメント1回戦の中村涼子vs牧野ステテコだろう。明らかにネタとしての構成やクオリティは中村涼子の圧勝だった。牧野ステテコは、女体転生したダンディ坂野みたいで、紋切り型のネタ。それで牧野ステテコが勝っちゃうのがTHE Wの磁場だったのだ。牧野が登場したときの客席の「フー!」という煽りにはカルチャーショックを受けました。その「フー!」を言った世代に“ポール牧野”というつかみは通じるわけなくゴリゴリにスベってたのが最高だったけど。
漫才、コント、ピン、歌ネタ、アマチュアとまるで初期UFCのような玉手箱感はよかったなあ。こういうのはワクワク感が大事。8組のトーナメント方式でも楽しそうだ。でも、蓋を空けてみれば順当な結果といえる。そら混合の大会で好成績収めている人が勝つでしょう。うーん。
総合的に消化不良な感じがするTHE Wですが、日テレもこういうコンテストをやりたいのであれば、アレを復活させればいいのではないかと思う。2010年ぐらいに突然開催されたコンテストS-1グランプリだ。ようやく時代がS-1に追いついたのではないか、と思う。対象を芸人に絞らず、プロ・アマ不問にし、面白い3分間の映像を作った人に1億円。このコンセプトなら衝撃を起こせると思うんだ。
狙いは、YouTube視聴層の獲得。YouTuberがテレビにすることもひとつの刺激だし、例えばYouTuber vs 映画監督 vs芸人という異種格闘技的なマッチメイクも可能だ。そもそもWeb vs テレビという、メディアでの構図を際立たせれば、ある意味テレビが一気に過去になってしまう展開も考えられる。そもそもコントや漫才のようにフォーマットを縛らせないコンテストを日テレはやってきたのだから、このぐらいカオスのあることをやってもらわないと困るのだ。