以前、投稿させていただいた『短歌の目 第0回』ですが、
みなさんから予想以上のスターをいただきまして本当にありがとうございます。
私自身、ブログを再開始して、はてぶろに移籍して右往左往でやってる状態なんですが、「引用スター」という独自のシステムに興奮しております。なんですか!この素敵な綺羅星たちは!この「引用スター」を知れたことだけでも、今回の『短歌の目』に参加してよかったなと思う次第であります。主催者の卯野抹茶(id:macchauno)さんに感謝でございます。いただいたコメント、大変うれしかったです!
2月投稿短歌の感想じゃん21−30 - はてな題詠「短歌の目」
引用スターの反応や言及してくださった方のコメントを見て、自分にはこう映るんだー!という違った角度の発見がありました。
他にもセルフで解説されている方もいますので、自分も今回の10首をどういう経緯で読んだかを、お話させてください。
前回のときにも、軽く書いたんですが、10個目のお題が「卒業」ということで、「卒業間近の学校生活」という統一の背景を決めた上で、10首作りました。ベースがあって、キーワードがあって、その2つの点を通る線は、どのようなものになるかという感覚で考えていました。
1:白
ひとつだけ時間の止め方知ってるよ 明かりを消して白湯を飲むこと
enk(id:enk_enk)さんから、この短歌についてコメントいただきました。ありがとうございます!
はてな題詠「短歌の目」第0回の雑なふりかえり - この国では犬がコードを書いています
言及していただいた「知ってるよ」ですが、この時間の止め方の方法を、気になる人から聞いたという感じにしたいので、ラフな言い方にしています。気になる人の本気か冗談かわからないような言葉ってなんとなく頭の中に残ると思うんですよね。そこから、もっと気になったりすることもあると思うし。
2:チョコ
チョコレートほおばりながら考える 昨日の君の睡眠時間
高校時代、バレンタインデーの日の女子ってすっごい眠そうだったっていう記憶がなんとなくあるんですよね。部活やら塾行って、そのあとにお菓子作るんですもんね。大変な一日。その眠そうなイメージをもとに考えたんですが、もともと「チョコをくれる君の隈が気になって」みたいな感じだったんですが、ちょっと短歌の視点が直接すぎるかなと思いまして、「そういえば、眠そうだったなあ」みたいな、女の子のことを考えながら物思いに耽るニュアンスにしました。
3:雪
制服に纏う粉雪誇らしげ 春廃止デモ行進の朝
この10首の中で一番最後に出来たものです。意外と雪が思いつかなくて。難産でした。その分、個人的にこの「春廃止デモ」という言葉は気に入っています。冬の登校風景をイメージしました。「春が来る=卒業」なので、「いつまでもこの学校生活が続きますように」という叶わない願いを入れ込みました。
4:あなた
「あなた」から始まる英文書きなさい 思いつくまま テストの裏に
「あなた」もなかなか難しいお題でした。その「学校」というテーマがあったので、「学校」×「あなた」=『英語でよくある不自然な「あなた」を用いた訳』という連想で、この短歌が生まれました。『「あなた」から始まる恋文』も決して、その「あなた」には届かないんですよね。提出しても、自分の所に帰ってくる。「あなた」が英語の先生だとしても、テストの裏に書いているので気づいてくれるかわからない、片思いの短歌です。
5:板
黒板消しクリーナー ON 飽きるほど一緒に帰ってくれますか OFF
「学校」×「板」=黒板。そこから派生して黒板消しクリーナーまでたどり着きました。結構、自分は「この単語で短歌作りたいなあ」と思うタイプなのかもしれません。ONとOFFの間に、恋する子の気持ちを埋め込んでいます。ONの間は、掃除音で聞こえなくなって、本当に言いたいことが言えるという感じです。冷静に考えれば、この行動って気持ち悪いと思うんですよね。ひょっとしたら掃除音に勝って、他の人に聞こえてるかもしれない。バレたらえらいことです。ただ、気持ち悪い方が人間っぽいというか、不器用な行動の方が生きてる感じがすると思うのです。この短歌はお気に入りのひとつでもあります。
6:瓜
習いたて 使ってみたくて 君を見て 瓜泥棒って廊下で叫んだ
参加者の皆さんのほとんどは、この「瓜」で大いに、頭を悩ませたと思います。もちろん私も。ここも、学校というテーマから無理くり「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」という故事成語に結びつけました。4「あなた」は英語、この「瓜」は古典ですね。
瓜田で靴を履くと、瓜泥棒と間違えられてしまうから、疑われるようなことはするなという教訓だったと思います。この「瓜泥棒」という言葉のインパクト。この故事成語を習わなければ、この職業(でいいの?)を知ることはなかったと思います。
そして、句切れをおしまい以外は「て」で統一してリズムを作っています。
7:外
暮れ泥むって この外のこと言うのかな ふたりの教室やさしく沈む
4〜6が授業中を想起させていたので、ここから放課後、夜へという流れです。私が思うに国民の9割以上が「暮れ泥む」という単語を武田鉄矢から習ったはず。卒業式の練習で、「贈る言葉」を歌ったりしている時期をイメージしました。そして、だんだん暗くなって「暮れ泥む」の指す風景を体感するのです。ていうか、今の子は「贈る言葉」とか歌わないっすよね。3月9日とかも少し古いですよね。。。遠くなる学生生活。
8:夜
こっそりとカップラーメンから出づる湯気よ ひとりの夜を救えよ
ここは 1で出てきた「湯」を入れました。時間を止めるための白湯をラーメンに使ってしまったのです。時間を止める道具だった白湯を失った今、すがるのは夜を自由に立ち上る湯気しかないみたいなイメージです。
9:おでん
お返しにコンビニおでんおごるから はんぺん、ちくわぶ 「不器用だよね」
学生生活でおでんを食べるタイミングは、コンビニしかないかなと思いつつ熟考。コンビニおでん、学生のときのほうが食べてたイメージが有ります。2「チョコ」に関連付けて、ホワイトデーを意識した短歌にしたかったので、はんぺん、ちくわぶと白いおでんを羅列しています。「不器用だよね」は女性側のぼそっとしたつぶやきです。
10:卒業
もう二度と この窓ガラスに君の名を書くことはない 卒業前夜
ゴールの「卒業」。卒業したくない!というベースで書いているので、ぱっと出てきたのは尾崎豊でしたが、ここまでの9首で自分が作り上げた学生像は、行儀よく真面目できるけど、窓ガラス割る勇気なんてこれっぽっちもないやつでしたので、この程度にしています。「時間を止め」ようとしても、「春廃止デモ」しても、冬は淡々と過ぎて、窓の結露も出来なくなって「窓に書けない」ことを受け入れ、学生生活の終わりを悟ったという感じです。
今回、短歌を作っていく中で、自分の中で新たな発見があったし、10首の中で物語を作るという自分なりのルールが思いの外楽しかったです。他の方の作品を見ていると、自分の頭の中にない、言葉の使い方、情景の浮かび上がらせ方を知ることが出来てすごく幸せでした。
また、次回もありましたら短歌、詠ませてください。