砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

にゃんこスターは鳴り止まないっ

昨日の夜 駅前TSUTAYAさんで

僕はビートルズを借りた

セックスピストルズを借りた

「ロックンロール」というやつだ

しかし、何がいいんだか全然分かりません

do da tura tura oh yeah! yeah! yeah!

夕暮れ時、部活の帰り道で

またもビートルズを聞いた

セックスピストルズを聞いた

何かが以前と違うんだ

MD取っても イヤホン取っても

なんでだ全然鳴り止まねぇっ

(「ロックンロールは鳴り止まないっ」/神聖かまってちゃん

 

昨日のキングオブコントでのにゃんこスターの衝撃はまさに、「ロックンロールは鳴り止まないっ」の歌詞を追体験しているようだった。大塚愛の「さくらんぼ」なのに。一日経ってから、もう1回、もう1回だけ見たい!という衝動に駆られてしまい、結果として数度見てしまった。ビートルズ、セックスピストルズにゃんこスターである。

 

同様の衝動を受けた人は多いのではないか。にゃんこスターが脳から離れない。きっと、街中のキングオブコントウォッチャーたちは、互いにこの先1週間は「どうすれば、にゃんこスターキングオブコントを優勝できたか?」を必死に討論しているはずだ。っていうか賞レースの勝ち方について自分なりの意見持ってる国民多すぎるだろ日本。クレイジージャパニーズ。

 

コントの展開を振り返ってみよう。まず、“縄跳び大好き少年”が大声で自己紹介をすることから始まる。最初の動きやセリフだけでコントの世界観やトーンを一発で提示している。そして「さくらんぼ」に合わせて縄跳び少女が現れる。(縄跳びが上手い!)この時点では、縄跳び大好き少年=ボケ 縄跳び少女=ツッコミ(というよりストレートマンか)という構図で、話が進んでいく。

 

物語の転換は「さくらんぼ」のサビである。華麗な技を続けざまに決めた少女がここで、縄跳びを捨てて(スカして)妙な踊りをする。この瞬間、ボケとツッコミが入れ替わり、観客がコントの仕組みを理解する。そして、縄跳び大好き少年のただただ絶叫のツッコミ。全盛期のボブ・サップを彷彿とさせる力技である。

 

このコントの仕組みを理解し、目線が定まった観客に、「さくらんぼ」の2番がやってくる。ここで、秀逸なのが、縄跳び大好き少年の「この動き求めてる俺がいる」というフリだろう。(まさに「ロックンロールは鳴り止まないっ」!)我々の目線に沿って展開を操作しているのが実に緻密だ。目の前の未来はわかっているのに、我々は笑わざるを得ない。

 

そして恐ろしいのはここからさらにギアを上げ、上級者しかついてこれないゾーンに突入することだ。エクスカリバーのような「選ばれしものしか抜けない縄跳び」というボケ、そして最後の自己紹介という衝撃の幕切れだ。もう振り切っている。エクストリームコントだ。

 

オチで自己紹介をするのは、私の記憶が確かならばスピードワゴンのコントであったはずだ。想いを寄せる女の先輩の前で年に1度しか来ない大波に乗る男のコントの最後で「この青春の提供は、スピードワゴンがお送りしました」というセリフがあったと思う。(確かにこのコントも幼心に衝撃的だった)

 

明らかに爪痕を残したにゃんこスターは、どんな道を歩むのだろう。そして、にゃんこスターのモノマネをTwitterにあげてきゃっきゃする同級生を蔑んだ目で見るであろう高校生の諸君。お前の思う尖った笑いを見せつけて、その同級生をドン引かせさせてやれ! 

 

 

マズローピラミッドの崩落

ある日、外でお昼ごはんを食べていたときのこと。隣のテーブルに、おそらく女子大生と思われる2人組がいた。料理が女子大生のテーブルに到着してから、そのうちの1人の発言に、私は突如、思考の渦に巻き込まれてしまった。

 

私、最近撮る前に食べるクセついてるんだよねー

 

 

???

 

 

素敵な料理を見れば思わず写真を撮ってしまいたくなるのは現代人間の性だ。だってカラフルだもん、かわいいもん、和食だってしぶいもん。それが気になったのではない。彼女の中で、「料理を撮る」>「料理を食べる」という価値観になっていることに驚きなのだ。

 

TwitterInstagramにアップし、世界とコミュニケーションする、あわよくば承認欲求を満たすことを第一としている感覚を持っているのだろう。そのマズローピラミッドを嘲笑うような順位付けが、聞き手のもう一人も同様のものを持っているかのような言いっぷりなのが面白い。個人的な価値観ではなく、集団としての価値観だ。果たしてこの女子大生たちは、喉が渇いたときや、危険にさらされているときでさえも、同様のことをするのだろうか。アメリカの狂ってるほどに頭のいい大学で実験してほしい。

 

とはいえ、食べる前に撮る(胃腸薬のCMみたいになってるけど)という順序自体は非常に正しいと思う。SNSを見ていて、「こいつやべえやつだ」って思うのは食べてから撮った写真をアップしているやつだ。食べかけの料理を見せられても気持ちのいいものではない。もう欲求が渋滞していて脳内がパンクしてるんじゃないか。食べかけられたもので美しいものは、Apple社のロゴだけだ。

 

そして、先程の女子大生に言いたいことがある。料理を撮る前に食べるのはクセではない。本能だ。

 

オオネストロングスタイル『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』観たマン

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』を観た。長え。

www.youtube.com

 

思春期に観た奥田民生のMVに衝撃的を受けたのを覚えている。生意気にも十数年生きてきてある程度の音楽を聞いてきたつもりであったが、なんというか“塩で音楽を食う旨さ”を提案してくれたのが奥田民生であった。絵本の文章のような歌詞かと思えば重厚なギターサウンド。歯を治しにいかねばならない義務感さえかっこよくなる男ってなんなんだよ。そんなわけで、私も見事の“奥田民生になりたいボーイ”となりました。

 

本作の主人公もふとしたきっかけで奥田民生のかっこよさを知る。(そのエピソードがわかる!)きっと、奥田民生になりたいボーイになったものは皆、それぞれ固有の出会いがあると思う。提案されるかっこよさをまんま受け取るより、己の中でかっこよさを見つける喜びを知ったというか。そんなOTボーイのコーロキを演じるのは妻夫木聡。一方、狂わせるガールが水原希子。(生まれはテキサス)

 

正直、原作も読んだ側から言わせてもらえば、水原希子はミスキャストで萎えるなあと思っていたのだが、ところがどっこい。完全なる“出会う男狂わせるガール”だった。オレゴンにある磁場がめちゃくちゃになる所ぐらいの狂わせるガールを演じきってみせたのだ。生まれはテキサスなのに。そういえば原作は『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』だったのに『奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール』と「」がつきました。もっと長え。

 

「と」が付くことで、OTボーイとDKガールは並立の関係のように思えるが、正しくは『奥田民生になりたいボーイ出会う男すべて狂わせるガール』と、「所有」したい欲望がひとつのポイントになるだろう。本作の大根監督の作品に、主に以下の特徴がみられる。

  1. 男性目線のボーイ・ミーツ・ガール
  2. ヒロイン役は、おじさんにも優しくしてくれそうなイメージの女優
  3. ブラック業務的なメディアという生業 
  4. リリー・フランキー

私はこの4点をオオネストロングスタイルと呼んでいるのだが、(他に特徴があればお知らせください)この原作の物語の雰囲気と、登場する男性陣の気持ち悪いがままの「所有」欲が、大根監督の作風に見事にマッチしているのである!これこそオオネストロングスタイル!素晴らしい乗りこなしっぷりである。

 

この作品で着目したいのは、観客が恥ずかしくなるぐらいキスシーンが多いことだ。え、そんなスパンでキスする?息もつかせぬキスシーンたち。そして、水原希子のキスがえぐい。下顎からすべてを受け止めるような口づけ方にゾクッとする。キスの仕方がアンダースローなのだ。なんなんだ。そういえば姓が「水原」ではないか!野球狂の詩!!

 

個人的には、妻夫木聡と同じ職場で働く新井浩文の、終盤での“ドラえもんのくだり”にニヤッとする。こういう、知識詰め込み層を狙い撃ちしてくる大根監督に私は抗うことなどできない。奥田民生になりたいボーイの私だが、こんな恋愛はしてみたく...否....チャンスがあれば沼にハマってみたいボーイだ。奥田民生のように力を抜くにはドラマティックな恋愛経験も必要な気がする。