このニュースを観た時に、自分は、まるで親戚の加奈子おばちゃんがとんでもない賞に選ばれたような嬉しさに満ちていた。あたりまえだけど、西さんは自分のことなんて知る由もない。圧倒的な片思いだってことは知っている。でも、西さんの小説、西さんの文章を読むと、自分の人生の中の断片的な何かを見透かされているかのような気がする。シンパシーを感じた上で、自分の気持ちを揺さぶられる言葉を鋭く、あたたかくぶつけてくる。
はじめて、西さんの作品に出会ったのは短篇集の「炎上する君」だった。
帯のピース又吉さんのコメントにするすると手が伸びた。最初の二人称の文体の話から度肝を抜かれた。自分の右手をこれほどまでに褒め称えたことがあっただろうか。彼女の世界に魅了される一人になった。
そして、完全に西加奈子を親戚にしたい。と思ったのが「この話、続けてもいいですか」というエッセイだ。
(読んだ本の数は少ないほうかもしれないけど)自分の出会ったエッセイの中で一番面白い。活字で大笑いするという、めったに無い経験をさせてくれた。こんな狂気の、活力の塊を持った人と同じ時代に生きているだけで何か嬉しかった。この快挙を機にもう一度読みなおそう。読んでない作品にも手を出そう。この黄金の右手で。
直近に発表された「舞台」、そしてこの「サラバ!」も、好き。
自分みたいにプライドが高い奴のことを良く知ってんなあと、どこか主人公に自分を合わせてしまっている。(その主人公思想もプライドが高い好例なのかもしれないけど)。長編が苦手な自分でも「サラバ!」はすらすらと読めてしまった。特に、下巻はちょうど1995年頃から始まるので、当時のおぼろげな記憶と照らし合わせながらとどまることなく読むことが出来た。そして、最後の3ページに打ちのめされた。
この直木賞の受賞で、どこかプライドが高い小心者、勝手に社会不適合者とラベリングしている人たちが少し救われたんじゃないかな。少なくとも自分は救われた。思ったより自分って世の中より外れてないじゃん。って。その道を外れたとしても西さんが包んでくれるはず。もっと堂々に生きよう。
だから、改めて思う。親戚になってほしいなあ。