砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

バチバチ世代闘争(『ミナリ』観たマン)

『ミナリ』を観た。

 


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 外国語の響きはなんだかおもしろい。アカデミー賞にもノミネートされた『ミナリ』は、日本語では「服装」という意味の言葉の響きになる。しかし、韓国語で「セリ」のことを指す。お隣の国なのに、一つの植物の名前だけでこんなに名前が違うのか。春の七草としてもおなじみのセリは韓国にも生えていて、ナムルなどにして食べることが多いらしい。

 

そんな『ミナリ』は、1980年代の物語だ。韓国からアメリカに移民してきたジェイコブとその家族は、おなじアメリカに住む韓国人用の野菜を作る農家としての成功を夢見る。ひよこの選別で日銭を稼ぎつつも、自らの土地を開墾して、野菜を育てる。ただ、そう簡単に物事は簡単に進まない。マイノリティーとしての慣れないアメリカの生活や、家族内での問題など様々なトラブルがジェイコブたちに襲いかかる。

 

刺さったのが、おばあちゃんと孫のバチバチした、いざこざの流れだ。このおばあちゃんを演じるユン・ヨジョンのキャラクターの強さよ!そりゃ賞取りますわってぐらい『ミナリ』における最重要人物だ。時代が進むに連れ、考え方は洗練されていくおかげもあるが、アメリカナイズされた孫のデイビットとアンにとって、移民の途中から合流する韓国育ちのおばあちゃんであるスンジャの仕草や考え方は、どこか野蛮的で受け入れづらかったりする。どちらかというと、おじいちゃん子・おばあちゃん子でもないし、お盆のときに両親の実家に帰るのが苦手だった私にとって、このデイビッドたちの嫌悪感に勝手に共感していた。当時は、あたしゃテレビを見て静かに暮らしたかったのだよ。

 

なんか知らんもの食わされたり、無意識にプライドを傷つけられたり、この噛み合わなさの結果、あるひとつのピークに達するが、そこは『ミナリ』のひとつの見所だと思う。そんな、家庭内外の問題を抱えながらも、ジェイコブたちは、家の近くの川に自生する『ミナリ』のように、健気にたくましく美しく生きる。