『友だちのパパが好き』を観た。
この映画、設定はとてもわかりやすい。「友だちのパパが好き」ということだけだ。日常の中に、そんな奴がいたらというお話。冒頭もとてもやさしくて、主人公(友だちのパパが好き)と、友だち(そのパパの娘)とママ(そのパパの妻)の会話から始まる。
ただ、残念なことに(そして素晴らしいことに)主人公であるメガネ女子が抱く友だちのパパへの愛情がひたすら気持ち悪いのである。無鉄砲。猪突猛進。剛剛剛剛。この純愛っぷりは、法やらどうたらこうたらを外してしまえば恋愛として見れば「間違いではない」と言わざるをえない。でもおかしい。こいつやばい。そのやばさを堪能するのだ。
映像構成も面白い。1シーンがほとんどカットなしで4〜5分続く。人間模様をさらにおかしくされるような密室感はなんだか他人のいざこざをのぞき見しているようで背徳感がある。また、その1シーンのフォーメーションも基本的に「女2:男1」のように女が多数であることが多いのも気になる。(ちなみに、登場してくる男性陣のクセもとんでもない。)チームで行う球技としての王道戦術を活かしているのである。私の記憶だが、唯一「女0:男2」の場面があったと思うがそこが映画のクライマックスとなる。
ちなみに、「友だちのパパが好き」は、「ピンクとグレー」と同じ日に観た。はからずも岸井ゆきの映画祭になってしまったことを合わせてご報告しますが、何より岸井ゆきのという物差し役がいるからこそ、この映画の面白さが引き立っているのだ。きっと今までの人生の中で出会ったことがあるような佇まい。岸井ゆきのって“理想の現実”という言葉がすごく合う女優だ。虚構の世界なんだけども岸井ゆきのが出演しているから、観る側は「私達の生活の延長線にあるかもしれない」と錯覚してしまう。今回のパパの娘役もがっつりハマっていた。誰しも、女子大生じゃない人も、なんだか女子大生な生活を経験した気持ち、生活をイメージできる力を持ってるんだけども、それが岸井ゆきのによって咀嚼されていく。その行為で我々は、狂った純愛でさえも、どこか現実的に感じてしまうのである。
そう、気づいたら岸井ゆきののことめっちゃ気になってる。SICKSもう1回見よう。