砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

白い修羅【ゴールデンカムイ】

ゴールデンカムイ』を観た。


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心配ごとが後を絶たない。例えば取引先からのメールが数日経っても帰ってこない状況とか。リマインドするけど、それも回答が無かったら為す術もないし、と心配に心配が積もる。それと、好きだった漫画の実写化も心配で心配だ。特に漫画ならではの表現をしているならば、なおさらで、そういうシーンがみすぼらしいCGが駆使されているのに出くわしたとき、そっとなにかに祈り始めたくなる。

 

かくいう『ゴールデンカムイ』の実写映画化も心配でたまらなかった。原作でしか表現できない雪山での戦闘シーン、自然との戦い、そしてイカれたキャラクターたちによる狂宴を実在の人物で描けるのか??と疑心暗鬼になりながらも、好きな漫画だったので見に行くことにした。

 

社会人らしく結果から言えば、めっちゃ良く出来てる〜!と興奮が止まらない作品だった。冒頭の日露戦争二百三高地の戦いの場面から固唾をのむ。主人公の杉元佐一が大暴れしたあとで、舞台が北海道に移る。見る限り白しかない世界の中で、隠された金の話が杉元に伝わる。

 

役者陣の体を張った雪山の中のアクションシーンが最高だ。スキーで突撃してきたり、雪に埋もれたり、冷たい川に落ちたり、見るだけでこちらの鳥肌が寒い方の意味で立つぐらい極寒の中での戦いは見ものだ。と、思えば静かなシーンではダイヤモンドダストが美しくも厳しい北海道の自然を映し出している。

 

ゴールデンカムイグルメ漫画というジャンルだとも思っているので、しっかりそのシーンをやってくれたのは嬉しかった。アイヌ料理を食べに行くのをいつか実行したいと思っているけど、こんな素晴らしい映画始まったし、私と同じ考えの人は多いはずだ。また混み始めそうなので「やりたいことリスト」に再びしまっておく。

 

今後の心配事として、今回の劇場版は、ゴールデンカムイ全体の話で考えれば単なるオープニングに過ぎないということだ。ここから多士済々の変態どもが出てくるわけで、劇場版のペースでやっていたらハリー・ポッターぐらいの年数は要すると思われる。一体どうなっちまうんだ?観客の我々も最後まで見届けるまでは不死身でいなければならない。

なんかいろいろ(平成に生まれてよかったこととか)

令和という元号にも違和感がなくなってきた今日このごろ、平成に生まれてエンタメを享受してきてよかったと思うことがいくつかあった。

 

まずは横浜アリーナで行われていた「男・出川哲朗還暦祭り」だ。出川さんだけでなく、ウッチャンナンチャン、ナイナイ、さまぁ~ず、バカリズムなど錚々たる面々がイベントに出るというので、生で見てみたい!というミーハーな気持ち爆発でチケットをゲットした。

 

イベントは平成バラエティの詰め合わせみたいな夢の空間だった。狩野英孝が、ロンドンハーツで誕生した音楽のカリスマ 50TAで還暦をお祝いすれば、さまぁ~ずが登場したあと、大喜利大会が突如開催され、ウッチャンが○×をつける。月曜の深夜に見ていた内村プロデュースの光景が目の前で繰り広げられる。(しかもバカリズム大喜利に参加している!)

 

ナンチャンは、笑う犬から誕生したはっぱ隊を披露するし、太田プロオールスターズ+哲ちゃんの熱湯風呂コーナーも行われた。アリーナの中央ステージから、熱湯風呂が競り上がってくる瞬間はゾクゾクした。おじさんたちがわちゃわちゃしながら(裸になったからマイクが使えず)熱湯風呂に次々と入っていく様子は不思議と感動的だったし、突如流れ始めた「白い雲のように」は意味が分からなくて最高だった。みんなで手を振りながら歌ってる姿にはグッと来た。

 

哲ちゃんは、最後には落とし穴にハマって粉まみれになって、それもカッコよかった。画面の中で行われていた平成バラエティの光景がライブで行われていて、しかも横浜アリーナで1万人以上の人々が笑っている。ネットではいいともの最終回の再来と表現していた人もいたけど、すごく納得いくし、なかなか昔より同じもので共有しづらくなった時代におけるマスバラエティの最終回にも感じた。テレビっ子に生まれてつくづく良かったなと思った3時間だった。

 

 

単発でやっていたヤーレンズANN0も、色々と見聞きした平成の記憶を刺激していく内容で最高だった。ジャスティン・ティンバーレイクから始まって次々と2人の口から溢れ出るたくさんの固有名詞を浴びるたびに記憶回路が疼いてニヤニヤが止まらない。

 

アサファ・パウエルパウエル国務長官→元オリックスのパウエル→JP→モノマネのJPと、スポーツと政治、芸能が次々とリンクしていくのがたまらない。

 

自分は、一時期格闘技も見ていたので、格闘家ゾーンになったところも大好きだった。全盛期ボブ・サップ情報もめちゃくちゃ記憶している。たしかにサップ歌うたってたよな。『SAPP TIME』のジャケットがマイケル・ジャクソンの『スリラー』オマージュと気づくのはだいぶ大人になってからだった。

 

フランソワ・ボタという格闘家の名前も令和のラジオで聞けるとは思わなかった。ボクシングチャンピオンで鳴り物入りK-1に転向したけど、結局蹴りの対策が上手くできずに結果を残せなかったおじさん(でも晩年はいいとこまで行ってた)、パンチを打つときすごいうるさいおじさん、ダウンしたシリル・アビディを殴っちゃって反則負けになったおじさんだ。(ボタのことめっちゃ覚えているな…)

 

リスナーからのメールをほとんど読まないから、雑談感が増していたのもよかった。ほとんど出たキーワードを調べることなく二人の雑談について行けていたのは間違いなく過去の自分が平成のテレビやネットから影響を受け続けていたからだ。よくやったよ、過去の自分。

 

根室のカリスマ【無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語】

『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』を観た。


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私はプロレスが好きで長年見続けているが、おもちゃ箱のようなエンターテインメントだと思う。キャラの立ったプロレスラーが華麗な技を繰り広げたり、レスラー同士でドロドロな人間ドラマが見られたり、若いレスラーから未来を感じる瞬間と出会えたり、見れば見るほどその奥深さを知らされる。

 

プロレス団体は大小問わず日本各地にあって地方を盛り上げている。この映画は根室を拠点として活動するアマチュアプロレス団体、新根室プロレスに密着したドキュメンタリーだ。新根室プロレスといえば、戦う巨大パンダ、アンドレザ・ジャイアントパンダSNSでバズったことでプロレスファンから認知された団体というイメージが強い。「無理しない ケガしない 明日も仕事!」という団体のキャッチフレーズからも理念を感じられる。

 

このドキュメンタリーでは団体の創始者であるサムソン宮本にスポットライトが当てられる。アンドレザ・ジャイアントパンダのブレイクによって、ようやく団体が軌道に乗り始めた矢先に病魔がサムソンを襲い、代表として新根室プロレスの今後に対して重要な決断を迫られる。

 

このサムソン宮本という男がプロレスを心から愛する生粋のエンターテイナーだということが、団体のプロレスラーへのインタビューや新根室プロレスの興行から伝わってくる。ときには家庭に大きな迷惑をかけてしまう男であるのも人間臭い。アンドレザ・ジャイアントパンダが顔役だからなのかもしれないけどサーカス団のようで、暗い人生を歩んでいた人たちをサムソンは新根室プロレスの一員として巻き込んで光を授けていったことが伝わってくる。

 

サムソン宮本が団体に対して下した決断を経て、ドキュメンタリーの終盤はその後の新根室プロレス所属選手にスポットライトが当てられる。子供の頃に新根室プロレスの興行を見て、入団を志した若手のエースTOMOYAに対してサムソンがある仕掛けを施すのだが、ここでサムソンのカリスマ性が際立つ。この人は本当にプロレスが好きで、仲間が好きで、それでいながらサプライズの入れ方が凄まじい。プロレスにすべてを捧げたサムソン最大の仕掛けに思わず胸が熱くなった。

 

強さや身体能力のすごさだけがプロレスじゃない。北海道の片隅にカリスマが立ち上げたハートフルな団体があったなんて、だからプロレスは見れば見るほど面白いんだ。入場特典でもらったサムソン宮本ステッカーを神様のように財布の中に入れた。