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究極の横顔映画(『ネオン・デーモン』観たマン)

『ネオン・デーモン』を観た。

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高校の化学の授業を受けていたときだったと思う。周期表の不思議な配置の理由を学んだときに、心が満たされた記憶がある。「希ガス」というやつらの存在である。専門用語なんてとっくに忘れていて、説明が正しいかどうか不安だが、原子は、原子核の周りに電子が層のように付いている、それぞれの層には席が決まっていて、席に余りの無い原子を「希ガス」と呼ぶ(と解釈している)。

 

水素や酸素などの原子には、席に余りがあって、その余りを満たすために合体する。それが水となる。「水素は手が1本、酸素は手が2本」と表現する先生の説明はとてもわかりやすかった。一方で、誰とも手をつながずに、周期表の右端でポツンと佇む「希ガス」の孤高の存在感が輝いていた。ヘリウムやネオンなどの原子を実際見たことが無いが、きっと美しく電子が回っているんだろうという想像をしながら授業を受けていたのだ。

 

そういう感覚でいる私にとって、この『ネオン・デーモン』という映画に『ネオン・デーモン』というタイトルを付けたのには本当に感動した。まさしく“完璧な美貌を持った悪魔”がその美で暴れだす、覚醒するという展開に、慄きながらも見入ってしまった。不穏なEDMやスローモーションの映像美といった効果もずるい。美しさの底なし沼へずるずると引き込まれていく。

 

主人公はジェシーというモデルの卵。このジェシーのサクセスストーリーなのだが、モデルとしてステップアップしていき、徐々に自信をつけて、やふぁて悪魔のようなきらめき出すジェシーが本当に恐ろしい。特にファッションショーのシーンなんか、絶対に見てはいけない花を覗くような不思議な背徳感があるのだ。

 

注目したいのは、主人公・ジェシーを演じるエル・ファニングの、これでもか!と見せつけてくる美しい横顔。もう確信犯的に横顔のカットが多いのでそこは1秒たりとも逃さずに見ていただきたい。子供のようでもあり、大人の一面も出すエル・ファニングの横顔に見とれることができる幸せ。息を飲む幸せ。究極の横顔映画の誕生である。エルちゃん恐ろしい子

 

しかし、美人薄命とは、よく出来た言葉である。人をとても簡単に狂わせてしまう美という概念。「美しくなりたい」という考えは、私たちにかけられた呪いのようだ。その究極の美を持つジェシーをとりまく環境の醜さ、執念が、この物語を思いもよらぬ方向へ導く。想像以上の展開で、観終わった後に体力が回復するのに時間がかかった。想像以上にハイカロリーな映画である。