『築地ワンダーランド』を観た。
築地市場を追ったドキュメンタリー!映画『TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)』予告編
世界最大級の魚市場である築地市場で働く人々に密着したドキュメンタリー。築地市場の仲卸業者や、食材を買い付ける高級料理店の職人、その不思議な世界に魅了されたハーバード大の人類学教授などのインタビューを通じて築地市場という神秘的空間の本質が明らかになっていく。
「おはようございます」から始まる築地市場の活気が美しい。次々と運ばれていく発泡スチロールの山が宝箱のようだ。宝箱を開ければ光り輝く魚介類たち。浦島太郎に見せてやりたい。その宝を鋭い眼差しでチェックする仲卸たち。日本人の背骨を支えてきたバックグラウンドには本物の人たちの仕事があったのだ。
その仲卸の人間たちが、自らの仕事について語る場面では、築地で働くことのプライドがひしひしと伝わってきて思わず惚れ惚れしてしまった。仲卸とは、大量の魚介類の中から良質なものを見極める仕事が主である。
仕入れに来る職人にとって最良の食材はどれか、その人のことを思いながら任務を全うする。職人との信頼関係がしっかり築かれているからこそ、最良の食材が最良の職人のもとへ届き、その繋がりの終わりにいる私達が幸せを感じることができるのだ。我々は食をつなぐ信頼関係とこだわりをもっと噛みしめるべきだったのだ。我々は食材だけでなくその絆も矜持も食べていたのだ。
映画は、築地市場の中から外へ展開していく。選ばれた食材がどこへ行くのか、ひいては日本の食の文化・継承という話にフォーカスする。給食として出荷されていく魚たち。子どもたちと魚を通じて、生活の変化に伴う食文化衰退の危機について触れていく。そういえば、ちゃんと魚を食べたのはいつだったっけか。加工された白身魚しか食べていないかもしれない。値段や調理方法だけで食事を決める回数はとにかく減らしたい。
とはいっても、魚介類の魅力や素晴らしさに触れる場所が確実に減って来ているのも事実である。この映画を観た後に、どうしても魚が食べたくなったが、周りにあるのはパン、唐揚げ、味噌ラーメン。茶色に占拠された街だった。