砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

ロボットは『ッヴィーン』の時代へ(『エクス・マキナ』観たマン)

エクス・マキナ』を観た。

 


映画『エクス・マキナ』予告編

 

 「エクス・マキナ」=「EX MACHINA」というつづりから「元・機械」という意味なんだろうか。調べてみたら、どうやら、ラテン語の「デウス・エクス・マキナ(=機械仕掛けから現れた神)」との意味らしい。いいね、ラテン語ラテン語とか一発で理解できるようになってみたい。ただ、AIがテーマになっているこの映画では、「機械仕掛け」というより「元・機械」の表現が正しいか。。。。。あ、だから「デウス」取ったのね。

 

大手のインターネット検索会社に勤める主人公のケイレブは、社内の抽選に当選し、滅多に会えないネイサン社長が住む別荘に1週間滞在する権利を得る。という流れでこの映画が始まるのだが、この起承転結でいう「起」の展開が非常にテンポが良くて気持ちがいいので、最初から集中して見てほしい。友達の車で寝てて「え、もう着いたの?」ぐらいのあっという間。その別荘が、隔離に隔離に隔離された大自然の中に存在するのが、ニクい。大自然のダイナミックさから、無機質な別荘に風景が変わるコントラストで一気に物語の中心地に到着する。

 

その別荘ではAI開発の真っ最中で、フォーカスが「自然と人工物」から「人間と人工知能」になる。そのエヴァと名付けられたAI役の、アリシア・ヴィキャンデルの演技がおぞましい。本当に人間なんだろうか?疑問を感じてしまうほどのAI的な動き方。特に微笑みのときの筋肉の使い方が本当にデジタル。「自然なAI」という現代人の脳内に存在する想像上の生き物を見事に現実化しているのだ。

 

また、このAIへの、かすかな機動音の演出がすばらしい。無音にする技術までは達成できていない不完全さにどこかリアリティーを感じる。いまやロボットの擬音は「カクカク」でなく「ッヴィーン」である。と、思いを馳せていたら街中でたまにいる、何もしてないのに鼻息が荒いおっさんまでもがAIに見えてきた。彼らもかすかに音を出して生きている。いや、実はもうすでにおっさんは人間でなくてAIで、この現代に解き放たれているのではないか?うーん、鼻息の荒いおっさんが気になってきた。近づいてみて、「ッヴィーン」のような音が聞こえてきたら、思いっきし水ぶっかけてみよう。