砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

かさくのじかいさくをもさく

第60回短歌研究新人賞 佳作マンとなりました。3回戦敗退といった感じでしょうか。残念。

掲載された5首をこちらにも置いておきます。

 

北口で君と落ちあうときいつも架空の鯨の話をしてた

紙パックの梅酒も切れてこの部屋は何もないねと笑うふたりは

給料1000年分捧げて火星まで青い夕焼け見るハネムー

虚しさが縫い付けられたぼくの瞳に消えたり点いたり都会の光

空き瓶を並べるぼくに明け方のテレビが報せる最高気温

 

ポストに投函した瞬間は受賞しか考えてない未来だったので非常に辛い。自己ベストを更新できなかったのも悔しい。まだ売れることが出来ないんだなあ。それでいて、うーん、手応えというのも全く感じない。この評価となった理由というか、証拠というのが客観的に獲得できていない分、自分へのフィードバックがゼロなのです。テーマを揃えた30首の存在など誰も知らない。ただ5首だけが誰にも気づかれずに消費されてしまった。そんな感覚なのです。産んだ子なのに。

 

野性歌壇では珍しく掲載が続いて地力が付いたような自負はあったんですが、作ったもので人を動かしているかというと、そのレベルまでは行けていないんですよね。何が足りないのかな。誤解を誘発するような抽象的な表現?時代にあった作風?コネ?

 

この短歌研究新人賞に作品を提出してから、頭が出がらしのような状態になっていて、アウトプットスピードも著しく落ちている。出るものが出ないと心が不安になるのです。自分のたどり着きたい場所がもっと遠くなっている気がする。次のステージに行くための施策を考えなければいけない。うーん。

 

にくいぜベイビー(『ベイビー・ドライバー』観たマン)

ベイビー・ドライバー』を観た。

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オタク性質を持っている奴らなら誰でも好きになってしまうエドガー・ライト監督の最新作。「コルネ三部作」大好きおじさんの私にとっては、待ちに待った映画なのです!

 

だってだって、主人公の設定からニクい。凄腕ドライバーといえば、ありきたりだが見た目が主人公とは思えない。サングラスにイヤホンを必ず装備する自分の内部にこもってる系の容姿。こういうナードな感じのドライバーっていなかった気がする。(いや、いるという方はご連絡いただけますと幸いです) 名前はベイビー。かわいいベイビー。

 

そして、イヤホンから流れてくる音楽に合わせて、スゴテクドライビングを決めてしまう。亜種のリズムゲームのようだ。普通のアクション映画ならば脇を固めるようなクセのあるキャラクターなのに、これが主人公に昇華してしまう気持ちよさ。そして、ベイビーが飄々と街をすり抜けていくさまがかっこいいのですよ。『スコット・ピルグリムvs邪悪な元カレ軍団』しかり、エドガー監督はこういうヒョロヒョロ男をカッコよく魅せるのがほんとにうまい。なあエドガー、このブログを書いているやつもヒョロヒョロ男なんだぜ?

 

音楽に合わせて踊りだす(この場合は人に限らず車もだ)という意味では、クライムアクションとミュージカルを兼ね備えたハイブリッドな映画であるといえる。例えば、銃声とバスドラムシンクロニシティー。爆破とともに叫びたくなるあのワード。音楽の力を余すところなく生かした傑作だ。

 

主人公ベイビーのオフの姿もかわいらしい。サンプリングで曲を作るし、街を舞台に曲を聞きながら踊るシーンにニヤッとした。こういう考えは万国共通なのだろう。そういう意味で、この世はミュージカルスターで溢れている。

 

しかし、映画館で見るには向いていない点もある。劇中の音楽を聞いて、おとなしく座るだけじゃ我慢できないということである。そう、踊りたくてしかたないのだ。ライブハウス上映を希望する。オールスタンディングで、気の済むまでリズムに乗って、ときにはベイビーの逃亡劇に声援を送りながらもここぞという場面で一緒にシングアロングしたい。もちろんみんなイヤホン着用がドレスコードだ。

 

 

 

ベイビー・ドライバー(字幕/吹替)

ベイビー・ドライバー(字幕/吹替)

 

chelmicoアーネスト・ホースト説

最近、chelmicoにハマっている。嘘だ。鬼ハマりしている。街ゆく半袖の人に、ただのchelmico大好きおじさんかと問われたら首を大きく頷く。長袖の人にも同様の反応をする。とにかくずっと見たくなる魅力を持っているのだ。

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『Highlight』も爽やかで聞き心地がいい。確実にかっこよいフローと、シティガール的な詞。なんといっても、肩肘張らずにのびのびとchelmicoとしての世界観を作っているのがとても信頼できる(こういうのは違うエキスが入ってしまうとすぐ崩れてしまうもろいものだ。)この『Highlight』も含まれている作品『EP』のアートワークも、ジム・ジャームッシュの『コーヒー・アンド・シガレッツ』を彷彿とさせるような世界観でいちいちかっこいい。シティボーイとして生きている私のツボをことごとくついてくる彼女たちに首ったけなのだ。mixiのコミュニティも作ってしまった。

 

鉄は熱いうちに打て。番茶は熱いうちに飲め。体内で迸る勢いのままに、先日、生chelmicoデビューをしてしまった。ステージに現れた二人はMVやTwitterで受けた印象そのままだった。信用できる。ダブルピースサインをいっぱいする人はいい人だ。二人のパフォーマンスも素晴らしい。真海子さんの気取らないマイクの持ち方、フロアの奥まで届けようとするレイチェルさん。(ステージの近くで見ていた私はその首筋の美しさに気づいてしまった。今年の夏の大発見。)

 

しかし、なぜ、2人は惹きつける魔力を持っているのだろうとひとりでに分析しだす。たどりついた答えは、バランスが非常に良いということである。ボケツッコミも互いに器用にこなすし、高音のレイチェル、低音の真海子のすみ分けが心地よい。この一点に散らばらずに、だけども着実にダメージを与える感覚、どこかで似たような印象を受けたことがある…

 

そうだ!アーネスト・ホーストのコンビネーションだ!ミスターパーフェクトの精密機械のような畳み掛けを感じる。

 

重厚なローキックで、思わず意識が足に向いたところで繰り出されるパンチ。ガードはがら空きだ。パンチの連打で必死にガードをするも最後に待ち構えているのは、弧を描くローキック。着実でテクニカルな連打から抜け出せない。気づけば私が見上げるのは天井だ。chelmicoは、そんなアーネスト・ホーストのファイトスタイルのようなパフォーマンスをやってのける。

 

すなわち、chelmicoは4 times champion アーネスト・ホーストなのである。