砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

春夏秋冬ヒュゲりたい

「ヒュッゲ(hygge)」という言葉をご存知だろうか。私も最近知った言葉なのだが、デンマーク語で、「居心地のいい、快適な状態や雰囲気」という意味を持っているらしく、2016年、オックスフォード英語辞書が選ぶ「今年の言葉」の大賞候補にノミネートされた言葉だ。(ちなみに大賞は、大ブレイク中の言葉である「post-truth」だ)

 

もう、このヒュッゲという言葉を知ってしまったからには、試したくなる衝動が抑えられない。ヒュッゲを巧みにあやつり、私のQOV(クオリティ・オブ・ボキャブラリー)をますます高めるのだ。

 

少し前に「chill out」や「チルってる」が若い世代の間で徐々に市民権を得だしたが、なんだか私は上手く使いこなせない感覚があった。無理に「チルってる」を使ってる感じも否めなかった。そこで、ヒュッゲの登場だ。意味的には「chill out」と非常に近い場所にいる言葉であろう。私は、チルたちに別れを告げ、ヒュッゲを操る人間として生まれ変わるのだ。

 

この先の予定にヒュッゲを当てはめてみよう。春になれば花見がある。満開の桜の下でワイワイ仲間たちと、お酒を飲む。いいヒュッゲだ!夏になれば、BBQのシーズンだ。濃い味付けのスペアリブをビールで流し込む。ナイスヒュッゲ!野球観戦しながら球場のフードを食べてヒュゲるのも一考。秋は、ハロウィンパーティーか。誰かがDJセットを持ってきて、ヒュゲったBGMの中で思いっきりヒュゲる。デンマーク語だから冬が1番ヒュッゲに適しているのかもしれない。暖炉を囲んだホームパーティーで、ロッキングチェアに揺られながらうとうとする。ヒュッゲの極みだ。

 

怒濤のヒュッゲラッシュ。たった一年で、こんな素敵なヒュッゲライフを送ることができるのだ!当たり前だが上記の年間プランは予定である。予定であり、未定である。DJセットを持ってる友達を作るところからはじめないと。スペアリブのレシピも調べなきゃな。ああ、一日でも多くヒュッゲしたい。

 

「寒い日」(短歌の目 第16回)

最近の嬉しい話。先日、ニコ生で放送された「歌ドカワ」の短歌アワードで、私が「題:リア充」で投稿した作品が、佳作として紹介されました。しかも選んでくださったのが私の神様、穂村弘先生。神様に短歌を評されるこの上ない幸せ。

 

 

しかし、まだまだ高みを目指さなければ。ということで、短歌の目、今月も勉強させていただきます。それにしても、2月って本当にあっという間!!

 

tankanome.hateblo.jp

 

今回の全体的なテーマは「寒い日」です。冬の生活感をなんとか練り込ませながら作ってみました。

 

 

 

1. 洗
お湯を待つ洗面台でザ・ワールドされたみたいに呼吸を止める
 
 
2. 鬼
青鬼も非番のときは少し高いヒートテックを着ているのです
 
 
3. 入
「スパイスをたっぷり入れたキーマカレーあります」見つけた私を褒めて
 
 
4. チョコ
ホットチョコレートがつべたい私の体の底へどろろと沈む
 
 
5. きさらぎ
北風がふゅーふゅー出しゃばるきさらぎに着込むいつもの黒いアウター
 
 
テーマ「夢」
よく似てるホワイトシチューに会いたくてホッキョクグマが立てる白い帆

 

 

 

 

 

全体的に伸ばし棒が多いですね。気に入ったのがあれば引用スターいただけますとうれしいです。

 

 

醒めるか溺れるか、それとも(『ラ・ラ・ランド』観たマン)

ラ・ラ・ランド』を観た。


「ラ・ラ・ランド」本予告

 

アカデミー賞最有力候補なのではないかということで話題が持ちきりの、このミュージカル映画。がっつり公開当夜に観に行ってきましたよ。主演はライアン・ゴズリング(ジャズピアニストのセブ)とエマ・ストーン(成功を夢見る俳優の卵・ミア)のご両人。2人が出会ってからの1年を季節ごとに描いている。いやはや、エマ・ストーンの目がくりっくりしてて、大画面で見るとすげえなあ。ゾンビランド』から『ラ・ラ・ランド』へ、たどり着けてよかったなあ。トゥインキー食べてみたい。

 

しかし、このラ・ラ・ランド』にはゾンビよりも恐ろしいものがあった。それは“夢”という呪いである。ロサンゼルスはハリウッドがある夢の街。映画スタジオもたくさんある。ワーナーのスタジオのカフェで、夢にピンそばアプローチしながら働くミアは、オーディションに挑戦して、夢を掴もうとするが落ちてばかり。そんなミアの目の前に現れた(というより耳の前?)のが、ジャズピアニストのセブであった。セブも夢に呪われた人間であった。とにかくジャズへの愛がすごい。ストロングスタイルまっしぐら。この、夢の魔力に触れた2人が、その夢を一体どうするのか、というのがこの物語の重要なポイントとなる。

 

これを観てから、そうやすやすと「夢を持ちなさい」とキッズたちに言えなくなる気がする。夢を持ち続け、やがて溺れることの危なさ、夢から醒めることの悲しさ。現実に向き合うことが果たして大人なのか、それとも夢の中を泳ぎきって、呪いを打ち破るのか。この華やかな世界に存在する苦い大部分に心が重くなる。

 

そういう辛い経験が多ければ多いほど、この映画は響くのではないか。そう考えると『ラ・ラ・ランド』はオマージュや文脈を感じさせる表現が多いし、私は中年向けの映画だと認識している。劇中で出て来る『カサブランカ』も『理由なき反抗』も観てないので、骨の髄まで吸いきったかといえば、肯定はできない。言葉の言い回しもおじさん向けだ。劇中に出てくる「消耗戦法だ!」というセリフに「アリかよ!」というツッコミで、笑うことのできるJKがいたらお知らせください。粗品を差し上げます。

 

ただ、文脈がわからなくとも、歌とダンスの場面は圧巻の一言。なんてったって長回しのような演出で繰り広げられる冒頭のシーン!LAのハイウェイが、渋滞の車の上までもがダンスフロアに変わってしまうのである。アメリカって恐ろしい国!エンドロールの“Traffic Dancer”という表記もかっこいいなあ。

 

そして、もうひとつは、象徴的な場面となっている2人で迎える朝焼けの公園で踊るタップシーン。鳥たちの求愛行動のようにステップを踏む2人が麗しい。2人が片手を上げて、交差しながらステップする動きを、勝手ながら「ラ・ラ・ランドする」と名付けてします。ああ、私も代々木公園、もしくは港の見える丘公園ラ・ラ・ランドしたい!

 

この他にも、真似したくなるシーン満載の『ラ・ラ・ランド』。スカート履いていいなら、かっこよく翻したいし、街中やダンスパーティーで歌い出す人、踊り出す人がいっぱいいるミュージカル的世界も体験してみたい。私も突然、街で踊ってみたらミュージカルの一部になるだろうか。無事に踊りきったら、私もきっとTraffic Dancerの仲間入りだ(もしくは不審者)。