砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

甘霖を待つ

少し前に2週連続で土日が台風で潰れるという、ショッキングな天気があった。土日で連続でやっていいのはGⅠレースだけだぞ。(金曜日ならジブリとかハリーポッターでもいいよ)

 

ただ、その台風ショックが強すぎて、この心地よい秋晴れのこの頃が物足りなくなっている。私は欲深い生き物であることは承知だ。女心と秋の空。振り回されていた男心はバカになってしまった。

 

雨の日には、「雨のことば辞典」という本を少しずつ読み進めていた。

雨のことば辞典 (講談社学術文庫)

雨のことば辞典 (講談社学術文庫)

 

 雨に関する言葉だけを集めているのだが、これが面白い。必然的に「あ」の項が太くなっているのはご愛嬌。五十音だけでなく季節ごとの索引もあって、今降っている雨はなんと名付けられているか確かめながら読んで楽しんでいた。

 

気に入った言葉は「秋霖」である。秋の長雨のことをさすのだが、それを、あめかんむりに「林」で表現していることにぐっときた。ぼくたちは傘を差しながら緑の中を分け入っていたんだ。ちなみに「甘霖」とは降ってほしいときに降る雨のことである。絶賛甘霖待ちだ。この「霖」という字は「張作霖」でしか見たことがなかったのでとても賢くなった気がした。あのころ教科書の「張作霖爆殺事件」という言葉にショックを受けていた高校生の俺に教えてあげたい知識だ。

 

まだ完全にこの本を読み進めてはいないのだが、衝撃的だったのが「雨」に関する説明の一文

…雨を大地を妊娠せさて作物の実りを子として生み出させるために、点が降らせる精液のようにみなす観念も、天地父母の親交と結びついて世界の各地に見いだされる。(雨のことば辞典)

言いたいことは非常にわかるが、“精液”という強烈な表現にくらっとくる。そうか、雨は精液だったのか。ちょうどよい量の雨の音を聞くと落ち着くのは、僕らが精液出身だったからだったのか。雨に濡れる女の子を見てなんだが心がドキドキするのも、雨の後の空がカラッとするのもそういうことだったのか。雨っていいやつだなあ。