『ゲット・アウト』を観た。
『ゲット・アウト』という言葉を聞くと、私の脳内サジェスト機能では、ドナルド・トランプよりも先にレイザーラモンRGが出て来る。あの関東圏を丁寧にディスるネタ好きです。で、一般的にはプレジデントを想起させる言葉が題名の本作だが、映画に関するニュースサイトで、軒並みベタ褒めだったので気になっていた作品なのです。こういうホラー/スリラー系はまあまあ苦手だが、そこを越えたところに発見があるものなので。しっかりゲット・インしてきました。
カメラマンのクリスはアフリカン・アメリカン。恋人のローズは白人。クリスはローズの実家へ招待される。しかし、その実家に行ってみると…という展開だ。あらすじから察すると構図はシンプルだ。アメリカ社会に未だに根付く黒人差別というものを背景にヒリヒリと進んでいく。
話はそれるが、アメリカ映画ってだけで、「人種」のことを考えてしまう。そんな自分の頭の中をどうにかしたかったりする。(それほどアメリカが抱えている問題ということなのだが)アメリカ映画を観ながら…「ああ、そういえば今までアジア系の人種出てなかったなあ」とか配役について反射的に思考を巡らせてしまう瞬間が、なんだか嫌だ。見る側もそういう映画の外側にある社会に気を配っているのだ。差別に対して配慮することに、差別を感じるのはもう直せないんだろう。
とはいえ、この『ゲット・アウト』は上手に差別と向き合っている印象だ。差別または差別に対する配慮から感じる不自然さがない。冒頭に、黒人差別についてしっかり言い切ってしまうのが気持ちいい。このフリが効いているからこそ、観客は、この奇妙な世界を疑いながら見ることができる。
で、演じる俳優の怖さがすげえのなんの。特に、ローズの実家のお屋敷で使用人を務めるジョージーナ。まったく変なところが無いのに、この人工的な気持ち悪さは一体なんだろうか。懐疑的な主人公の目線で見ているというのもあるが、鼻につく不自然さを拭えないまま話が進んでいく。(そして、その不自然の正体もしっかり明らかになるのだ!)おっかないよこのお姉ちゃん。
そんな心臓に悪いスリラーかとおもいきや、B級的な映画な演出があるのが救いだ。主人公の親友であるロッドのキャラクターにホッとする。クリスはロッドに対して、電話でこの家の異変を告げるのだが、内と外の世界がしっかり区別してるもの見やすい。クリスとロッドのバディぶりも見ものだ。
ロッドは、陰謀論を唱えたり、パンダ・エクスプレスよろしく“アメリカ映画でよく見る宅配中華料理”をズルズルやってる。ココナッツクッキーのような安心感だ。演じる彼の名前もいい。リル・レル・ハウリー。コンパクト片手に叫べば簡素な魔法なら使えそうだ。リル・レル・ハウリー! リル・レル・ハウリー!ネタバレしてるくせに面白くない映画ブログ消えてしまえ!!
ちなみにこの女優名言いたい2017はクララ・ラゴです。