『キングスマン:ファーストエージェント』を観た。
2021年の小学生のなりたい職業ランキング第1位はYouTuberというネットニュースを見たけど、本当なのかな?と思う。「世の中の小学生はこんなん好きなんでしょ?」という小学生のステレオタイプを意識した小学生による”大人”の答えがたまたま多かったというだけなんじゃないかと睨んでいる。
そんな子供の皮のかぶった大人の本当になりたい職業ランキング1位はスパイに違いない。(次点で探偵)言葉巧みにキーパーソンを誘導したり、ガジェットや戦闘術で危機的状況を突破したりして、陰で世界の崩壊を食い止める。こんな魅力的な職業、子供が憧れないはずがない。だって、もういい大人の私はまだまだ憧れているのだから。
大人気スパイ映画シリーズの第3作目。『キングスマン:ファーストエージェント』ロンドンのサヴィル・ロウにある仕立て屋「キングスマン」が独立した諜報機関としての顔を持つようになったのか、その誕生秘話に迫る。それまでの2作におけるエピソード0的な位置づけだ。舞台が20世紀初頭なので、あのときの人物の若かりし頃が出るということはないが、ところどころ前2作を思わせるセリフにニヤリとする。
主人公は英国貴族であるオーランドとその息子のコンラッド。1914年に世界に混乱を招こうとする組織を倒すために、陰でミッションを遂行する。しかし、時代は第一次世界大戦下で、戦争に翻弄されてしまう親子の物語も描かれている。ラスプーチンやイギリス国王、ドイツとロシアの皇帝、さらにはマタ・ハリなど実在の人物が登場するし、史実に基づいたエピソードもあるので、この時代の世界史の基礎的な知識を頭に入れておくと、理解力がより深まる。ラスプーチンの戦闘シーンなど史実とフィクションの混ざり具合がたまらなく好きだ。これは間違いなくキングスマンのふざけ方だ。
スパイものであり、歴史ものでもある。当時の最先端の通信手段が電話だし、戦地では伝令係が重要な役割を果たすのだから情報が格段にならないほど伝わりにくい時代だったんだろうなあと考える。そんな情報が伝わりにくい時代で、オーランドたちはどうやって裏情報を入手し、任務を遂行してきたのか。その答えもニクかった。
それでいて、シリーズではおなじみのおじさん無双タイムがあるのが有り難い。おじさんだっておじさんに憧れるのだ。はあ、動けるおじさんかっこいい。それでいてクールなおじさんかっこいい。知的で紳士的で敏捷性のあるおじさんが一番かっこいいんだ!!
個人的には、あるシーンで映写機で戦争の記録映画が流れる中、オーランドと敵が戦闘を繰り広げるのだけど、その戦いがスクリーンに影になって映る瞬間にグッと来た。自分たちが歴史の授業で学んだ表の20世紀史には載っていない、裏の20世紀史を戦った人々が存在するのだ。