砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

どらやきマリトッツォ

セブンイレブンに入店すると、必ずスイーツコーナーを見てしまう。スイーツコーナーの代謝もはやく、品揃えもセブンイレブンごとに違っているので、ルーティーンになっている。出先で入ったセブンで、新しいスイーツの存在に気づき、最寄りのセブンで購入する(置いていないとヘコむ)という傾向が多い。最寄りだとアイスコーナーもチェックしてしまう。

 

この間、最寄りのセブンで、いつものようにスイーツコーナーに目をやると、魅力的な商品名が入ってきた。どらやきマリトッツォだ。今年のブレイクスイーツナンバーワンとなったマリトッツォを初めて食べたのもセブンのだった。日本人の商品開発力はすさまじいもので、今やマリトッツォは、本来のアイデンティティを失い「クリーム状の何かを、パンなどで挟んだ何か」であれば、名乗っていいという風潮になっている。

 

もちろん、どらやきマリトッツォは、あなたがおそらく想像したとおり「生クリームと餡を、どらやきの生地で挟んだスイーツ」なのだけれど、私には、それとは異なる輝きを放っているように見えた。どらやきマリトッツォが芸人に見えてくるのだ。

 

自分は芸人さんが大好きだから、連続で並ぶことのない単語が2つ並ぶのを見るだけで、コンビ名に見えてくる。ほら、オリエンタルラジオとか霜降り明星とか。きっと所属事務所のHPで「どらやきマリトッツォ」って見た気になる。ひらがなとカタカナのバランスも美しい。

 

私が思うに、どらやきマリトッツォは日本人とイタリア人のインターナショナルなコンビだ。それぞれの国の価値観や習慣を比較した漫才が特徴だ。日本人のどらやきは、ぽっちゃり体型で小綺麗な身なり、めがねをかけて、やっぱり蝶ネクタイはしている。自分の中ではマヂラブの村上さんやWエンジンのチャンカワイさんに近い感じ。

 

相方のイタリア人・マリトッツォは、偶然、地元で見た松本人志に憧れて、日本のお笑いに興味を持ち、留学生として来日。芸人としてはまだまだ稼げないから、端正な顔と185cm以上の長身を生かして、アパレルのモデルで活動することもある。3兄弟の次男で、長男はイタリアで弁護士、三男はプログラマーをやっている。こんな異色の経歴、テレビが放っておくわけがなく、「今夜くらべてみました」あたりに出演しだす。

 

徐々にどらやきとの格差が生まれだすマリトッツォ。芸人としての成功が目標なので、ネタ番組への出演を目指す。引っかかったのはあらびき団だ。ネタは至ってベタな「もしも、キワモノ芸人のネタをイタリア語でやったら」というものだ。イタリアのですよ。に、イタリアの小島よしお、イタリアのハリウッドザコシショウ。さらにはイタリアの厚切りジェイソン、果てには、イタリアのイタリア人(山ちゃんのピン時代のネタ)までやりつくす。モデル体型のハンサムがゴリゴリにお笑いをやっているのが、注目を集める。

 

ただ、マリトッツォ自身の芸人としての成功はあくまで、どらやきマリトッツォで売れるということに変わりはない。コンビで過ごす時間は減ってしまったけど、怠ることなく、都内のライブに出続ける。私は、どらやきマリトッツォを一度見たことがあるが、きちんと漫才をしようとする姿勢に好感を持った。彼らの漫才の

 

マ:

俺、嘘つきだったけど、日本に来る前に真実の口とディープキスしたことあるんだよ。そうしたら、舌を一枚引っこ抜かれたわけ。だから日本に来てから正直者になったんだよ。

ど:

よくわかった。お前はもともと舌が三枚あったんだな

 

というくだりが好きだ。もちろん、日本とイタリアのコンビというのが、最大の強みだけど、彼らには、そのお国自慢みたいなネタだけじゃない、どらやきマリトッツォの2人しかできないネタや世界観を創造してほしいと思う。

 

そんなことを妄想しながら、きなこわらび餅を手にして、レジへ向かった。