砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

M-1グランプリ2020の感想を書かせてください

今年、全世界を覆ったコロナという脅威があったものの、たくさんの大人のおかげでM-1グランプリが開催されただけでもM-1好きの国民としてはスタッフ優勝!と賛辞せずにはいられない。自分は準決勝をライブビューイングで見てたのだが、ある組がネタを終えると、次の組の出番前に一回一回サンパチマイクを消毒しに登場するスタッフさんの小刻みな運動量に気を取られてしまった。本当に感謝してます。

 

加えて、YouTubeチャンネルの更新量もとてつもなかったのもありがたい。2回戦、準々決勝と、すべては見られなかったが、こんなに漫才師がいて、漫才師の数だけ漫才のスタイルがあるということに感心してしまった。

 

っつーか、「これは漫才じゃない」論争が巻き起こってるみたいだけど、人生で何千本とネタを見てきた(はずの)自分からしてみれば、またその話ですか、、、と正直見下げることしかできない。過激派の自分からしてみれば、壇上にマイクが一本立っていて、マイクの周りで出演者たちが笑いを取ろうとしたらそれはもう漫才だと思う。誰か一人でもそれを「漫才」と許容した瞬間にそれは漫才になるのだ。

 

「二人組」の「妙齢」「男性」が「軽快なおしゃべり」をするという条件をすべて満たしたものを漫才と思うやつに見せてやりたいよ。テツandトモを、南海キャンディーズを、ザ・プラン9を、ジャルジャルを。過去のM-1がとっくの昔に漫才の多様性を許容しているのに点で見ることしかできないなんて。やれやれだぜ。

 

ヒートアップしてしまったけども、今年のM-1の感想。正直、自分の予想と違った展開になっていた。当てずっぽうでなくて3連単予想当たった人っているのかな?と思うくらい、映像越しには場の空気を把握できなかった。磁場が狂ったひとつの理由は、去年の”美しき呪い”だろう。自分以外の9組がライバルなんだけど、どこか奥の方で、あまりにも完璧すぎたミルクボーイの幻影と戦っているようにも見えた。(私もどこか幻影と比べていたような節がある)

 

そしてコロナという閉塞した現在だからなのか、大声系のネタ、パワータイプの漫才の割合が多かったように見られる。準決勝のときは、その傾向を全く感じなかった。巨人師匠の「ツッコミはお客さんの代弁者」という言葉が、脳内のピースにすっとハマる。自分たちは、大声を上げられない分、彼らに気持ちを託しているのかもしれない。インディアンスのきむさんのタイミングバッチリの「うるさいなあ!」はホントに気持ちが良かった。

 

それにしても、野田クリスタルにとってこれ以上完璧な結末を迎えたラブ・ストーリーのハッピーエンドがあっただろうか。2017年で上沼恵美子にボコボコにされ、2018年、2019年は「えみちゃん待っててね〜」と愛を叫んだものの、成就しなかった。だけども、2018年KOC決勝進出、2020のR-1優勝と、着実に力を付け待ちに待った大舞台。「どうしても笑わせたい人がいる」男の3年越しの想いは、結果として「どうしても笑わせたい人を笑わせた」男になった。そのドラマを知っているからか、マヂカルラブリーの優勝が確定したとき、思わず小躍りしてしまった。ずっと振り向かせたかったあの人が、過去の説教を全く覚えていなかったというのも出来すぎじゃないか。誰かがごちゃごちゃ言っても、これは間違いなくハッピーエンド。野田クリスタルが笑いの女神を振り向かせた一連の物語を "Magical Lovely"と名付けたい。