『1917 命をかけた伝令』を観た。
1917年はロシア革命があった年ということを今でも覚えている。その理由はネタ番組で観たドランクドラゴンの家庭教師というコントだった。語呂合わせで歴史の年号を覚えるというくだりで、家庭教師役の塚っちゃんが「生稲晃子がロシア革命!」とボケる。当時ロシア革命のことを知らなかった私だったけど、その語呂の良さはキャッチーだったし、爆笑した記憶がある。そして、 僕らの世代にとって生稲晃子はキッズ・ウォーのお母さんだった。
そんななか、この『1917 命をかけた伝令』のサイトを観たら、著名人のおすすめコメントの中に生稲晃子がいた。グッジョブ宣伝部。きっと宣伝部も誰かも家庭教師のネタを見ていたのだろうか。生稲晃子も観たこの映画、1917年の話なのだが、ロシア革命の話でもキッズ・ウォーの話でもなく、ワールド・ウォーの話である。ざけんなよ。
舞台は、第一次世界大戦下の西部戦線。イギリス軍は、後退したドイツ軍を追いかけようとするが、イギリス軍の航空偵察は、それが作戦であることに気づく。イギリス軍の前線は進撃中で、このままだと壊滅的なダメージを受けてしまう。前線に攻撃中止することを伝えるため、2人の青年兵士トムとウィルは伝令役として戦地を駆け抜ける、ある1日の話だ。
様々な死線を2人は越えていき、1日しかないロードムービー的な展開みたいでもある。悪衛生な水辺を越えたり、空になったドイツ軍の塹壕やトンネルをくぐりぬける。特徴的なのは、その移動の様子をワンカット風の映像にしているということだ。
敵側の領地に入っているのだから、いつ襲われても仕方がない。もしかしたら罠も仕掛けられているかもしれない。しかし、休息する時間などない。極限状態の中で、行動するトムとウィルを操作するコントローラーも持っていないわけで、われわれ観客は2人が無事に任務を遂行することを怯えながら祈ることしか出来ないのである。しかし、そんな2人の道中に大きな事件が起こる。ここから、サブタイトル的に付けられた「命をかけた伝令」という言葉の重みが増していく。
もし、このようなワンカット系の映画に魅了されたならおすすめしたいのが『ヴィクトリア』だ。これは正真正銘の140分ワンカット映画で、日常に近い中で、ある女性がトラブルに見舞われる作品だ。映画を見すぎて麻痺していたけど、人生にカットなんてものはない。すべてはつながっていく。戦争だって誰かのワンカットのある瞬間だったんだ。