砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

なんかいろいろ(GWのこととか)

悲しい気持ちになった。初めて入った飲食店でトマトソースのパスタを食べていたら壮大に白いシャツに跳ね回し散らかしてしまった。すごい気をつけていたのに。ソースの具が重いなあと、パスタごと少し強引に持ち上げたのが不用心だった。フォークをすりぬけ更に叩きつけられるパスタによって被弾。マシンガンで撃たれたかのような胴部を、くしゃっと丸めたおしぼりで高橋名人のように叩く。

 

白シャツでトマトソースのパスタを食べようとしたのが間違いだったのかもしれない。お昼時に通りを歩いていて、偶然見つけたイタリアンの看板。看板の矢印は地下を差していて、誘われるがままに入った。

 

入店すると、レコードやギターが飾ってある。店主の趣味のようだ。席数が少ない店内はピークを過ぎたからから他のお客さんも少なく、静かな時間が流れていて、「隠れ家」という表現が似合う。初めて入った店ということもあり、慣れない空気感が知らず知らずのうちに私の感覚を狂わせていたのかもしれない。

 

会計を済ませ、店のドアから地上へと続く階段を恥ずかしそうに上る。白シャツでも、トマトソースパスタを食べても大丈夫だろう、紙エプロンもらわなくていいだろう、ソースが飛ばないだろう、という慢心が招いたことだ。これからは「かもしれないパスタ」を徹底していこうと誓った。

 

そんな悲劇もありながらも、しっかりと獲得した10連休の備忘録。遠出をせずに、あるがままに過ごしました。GWの初っ端は友人と代々木上原の按田餃子へ水餃子を食べに出かけた。

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按田五輪#按田餃子 #餃子#anda2019#tokyo2020#代々木上原住みたいおじさん

 

はじめて降りた代々木上原駅は静かな雰囲気。私がぼんやり抱いていたイメージ通りの閑静さだ。まだ夕暮れ時は寒いけれど、通過する電車の音はどこかあたたかい。按田餃子はいろいろなメディアで紹介されたお店ということもあって、行列が出来ていた。

 

お店に入るまで1時間ぐらい待っていたのだけれど、その間にお持ち帰りを買って帰るひとたちが何組かいて、その誰もがおしゃれに見える。家族連れの客もいて、きっと夕飯のおかずにするんだろうなと、わいわいとした団欒を妄想する。そんな代々木上原の空気を纏ったひとたちへの憧れを抱いてようやく入店 。私は食が細いほうなのだけれども、あっという間に注文した水餃子とお茶碗サイズのご飯を平らげてしまった。

 

特に、机にあった「味の要」なる調味料が魔術であった。クミンやらコリアンダーが入った黄土色のスパイスペーストで、水餃子につけるだけで激変してしまう。ナチュラルメイクな女の子が突然、目鼻立ちの際立つメイクをして現れたような衝撃だ。どっちの女の子も好きなんだけど、そのポテンシャルを引き出す味の要に完全”幸福”せざるを得ない。レジ前で味の要が売っていたものだから、思わず自分用のお土産に買ってしまった。後日、スーパーで買ったお惣菜の焼餃子に付けて食べる。ちょっとカレー風味でありながらガツンとくる感じがたまらない。

 

味の要が入った瓶には、ゆるキャラっぽいデザインが描いてあって、冷蔵庫のポケットで眠っている。早く、次の登板を与えたいところである。そのゆるキャラのあだ名は「潤ちゃん」にした。

 

平成から令和になる瞬間は押上方面へ。なんでも、スカイツリーがこの日だけは24時以降も営業を行い、改元のタイミングに合わせたライトアップをするとのこと。しかし、私と同じ考えの人はたくさんいて、スカイツリーに到着した頃にはチケットが完売。平成最後の敗北である。雨の中、同じく敗北したものたち数十人と、揃わないカウントダウンをしながら、ライトアップの瞬間を見届けた。靄の中、日の丸色に染まるスカイツリーを見て、わずかではあるが、令和最初の勝利を手にした。

 

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令和こそ売れたい#happynewera #tokyonight #tokyoskytree #nightlights

 

 

遠出をしなかったからGWの期間は映画館かスマブラかストリーミングサービスをサイクルするような生活。特にNetflixの「セックス・エデュケーション」が素晴らしくて一気見してしまった。

 

スクールカーストが蔓延るイギリスの高校で、多様な性の悩みを抱える登場人物たちの脆さを(私が大人になったからかもしれないけど)見守りたくなる。母親がセックス・セラピストで、本人自身も思春期ならではの性に苦悩するウォールフラワー的な主人公・オーティスが、学校で、カースト上位の性の悩みを聞く場面だけ、立場が逆転するおかしさもある。と、同時に立ち上る『ブレックファスト・クラブ』の薫り。各話、残り1シーンの一筋縄では行かない結末の余韻を感じている間に、次の話が始まってしまう。で、見ちゃう。やめられない止まらない。終わっちまった。はやくシーズン2を心待ちにしている。

 

英語をヒアリングするという意味でも興味深い。バンバン性に関する用語が出てくるし、これは一種の医学ドラマといっても過言ではないだろう。一部のNetflixは、英語字幕に変更して見ることができるのだけども、何度も連呼されている言葉を英語字幕で見たら、 高校生のときに辞書で興味本位で引いたVから始まるスペリングが登場して、「あ、こういう発音するんだ」と学びの場にもなった。

 

好きなセリフは、生徒会長で水泳もできる文武両道キャラのジャクソンが朝練に行く場面でコーチから活を入れられる場面での一コマにある。

 

コーチ「成功が努力より先にくるのは?」

ジャクソン「辞書の中だけ!」

 

こういう言い回し大好きだ。英語字幕で見ると成功はsuccess、努力はworkで、英語でも日本語でもこの言い回しが成立する。オリジナルの言い回しかと思って調べてみたらヴィダル・サスーンの残した言葉らしい。にくいこと言うよね、ヴィダル。

 

そんなGW明けに公開されたEnjoy Music Clubの「東京で考え中」が、働きたくないモードに移行しそうな私を食い止めるぐらい身にしみた。

 


ENJOY MUSIC CLUB「東京で考え中」

 

東京で一人暮らしする身としては、選択肢が多すぎるこの街で、この電脳世界で、ささいなことでも悩んでいるのが私だけではないということに安堵を覚え、無駄と公開してしまいそうなシンキングタイムを祝福するような後半のベルの音に救われる。RHYMESTERの『ちょうどいい』の延長線の世界にいるようで、ほんとに、煩悩とだったら、いつでも踊っていられるよ。

 

そして、この時期は短歌賞の締切が設定されている。何が正解なのか不正解なのかわからないんだけど、出力しやすいフォーマットで表現できるのだから、とにかく自分の好きなようにやるしかない。煩悩と踊りながらもなんとか提出したい。