砂ビルジャックレコード

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ふたつの知らない挨拶

もうすぐだというのに、ぼくたちは最も適した挨拶を知らない。改元前、改元後の挨拶のこと。年末年始を例にする。年末、冷たい夜風が吹く中、帰り際に親しい人に向かって「良いお年を」と言う。言わないとなんだかむずかゆい。そして、年が明けたら、「あけましておめでとうございます」だ。口に発することで体に新年が明けたことを馴染ませるようでもある。

1年に1回必ず迎えるルーティーンだからこそ、この挨拶は存在するが、今回は話が異なる。平成生まれの私には、改元は、はじめての経験だし、崩御だった昭和→平成とも雰囲気が違うようだ。明らかに改元前・後が未来に設定されているのであれば、何と言うべきか考えていきたい。

 

 

4月30日には、なんと言おうか。「良いお年を」のパターンを踏襲するとなら、「良いお元を」になる。「お元」?…茶屋の娘ではあるまいし、そもそも言われた側もポカンだ。もっとシンプルなのがいい。

「それじゃ次は令和で」というのは、わかりやすいが直接的かもしれない。日本語的な遠回りな言い回しで挨拶したい気持ちが沸々とわきあがる。なんだか待ち合わせみたいじゃない?「それじゃ明日、丸井前集合で」のやつだ。令和からほとばしる地名感、ブランド感。令和デパート7階の催事場では、GW中にラッセン展が行われるようです。

ここは、年末との違いを明確にすべきか。年末〜年明けの瞬間にすること第1位といえば、ジャンプすることである。面白くない面白くない...とわかっていながらも、ちょっとやりたくなってしまう。「俺、令和になった瞬間、宙浮いてたからw」そう言うであろう奴らを戒めるために「ジャンプすんなよ!」と、釘を刺して別れてみる。駅前でちょっと大声で、関係ないやつにも聞こえるように。

 

 

5月1日の「あけましておめでとう」に変わる挨拶。これもまた難問である。”明ける”という表現でいいのだろうか。ここは目線を変えて英語で考えてみよう"Happy new year!"のyearを置き換えればよい。「元号 英語」で検索すればeraと出た。なるほど、時代という表現なのか。つまり、"Happy new era!"が正解である。いやいや、待てよ。奥ゆかしさよwhere。そもそも、英語にした私が間違いでした。しかし、時代という観点は、いいヒントだ。

「新時代の幕開けぜよ!」ここで龍馬スタイルを試しに投げてみる。時代を動かしながら明治の日本を見ることの出来なかった龍馬の意志を受け継いで、穏やかにバトンが次の世代に渡されることを見届けようじゃないの。ただ、このセリフを言うのに大きな問題がひとつあって、それは、私があまり坂本龍馬に思い入れが無いということだ。高校も世界史取ってたし。

巡り巡って煮詰まった結果「…なんだか、なっちゃいましたね」と照れくさそうに言うのが適しているという結論に落ち着いたけど、もっと芯を食った挨拶があるはず。人生でも数えるぐらいしかない瞬間にふさわしい表現があれば教えてくださいエブリワン。

 

それでは、令和を待ちましょう。ジャンプすんなよ!