砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

卒業生代表(『恋は雨上がりのように』観たマン)

恋は雨上がりのように』を観た。

 


「恋は雨上がりのように」予告

 

恋は雨上がりのように』という漫画の1話目を読んで、その風景描写に心が震えたことは今でも覚えている。ページをめくれば自分が3年間通った高校への通学路や横浜の町並みが忠実に描かれていて、その中を主人公である女子高生、橘あきらが歩いている。きっと読者の誰よりも、ぼくら卒業生たちは2次元と3次元の不思議なシンクロにクラクラ高鳴っている。

 

繊細なストーリーは人気を博し、あれよあれよとアニメ化され、とうとう実写化。そらもちろんOB(的存在)として観させていただきます。横浜は数々の作品のロケ地になったけど、”横浜感”のない母校が舞台のひとつになるなんて、想像だにしなかったし、許されるのならもっと後から入学したかったよ。

 

原作通り、橘あきらが、バイト先「ガーデン」の店長である近藤(45)に片思いをする物語である。実写化映画を見るとつきがちなため息は出ず、配役も完璧である。透明なヴェールで優しく包まれた世界観がしっかり再現されているし、原作ファンが好きであろうエピソードがふんだんに詰め込まれていてにやにやする。ちなみにガーデンの元ネタとなっているファミレスは元住吉なので、私の地元ではない。そのかわりに自分の通学路にあったガストを「俺のガーデン」と脳内補完して楽しんでいるのです。ふふふ。あそこの敷地、潰れたと思ったらすかいらーくグループの別レストランになるんだよ。

 

クールだけど不器用な性格の橘あきらを演じる小松菜奈が地元を歩いているという映像を見させられているだけで、もうたまんない。生活圏が全国の映画館で美しく流れているなんて!あの駅を使っているということは、きっとヨーカドーで勉強したことがあるはずだ。あきらの親友、喜屋武はるかを演じる清野菜名と同じ改札口にタッチしたことがあるのは自慢していいことでしょ?同じ最寄駅である横浜高校の青年たちが颯爽と校舎へ駆けていく。こうやって後輩の足跡を妄想できるのも卒業生の特権だ。

 

横浜の高校生のデート事情もしっかり描かれている(ここのエピソードが大好きなのです)。やっぱり最初のデートはみなとみらいが定番だ。コスモワールドには行かずワールドポーターズで映画を観るのがベター。同じ階にレストランもいっぱいあるのがいいよね。1階にはコールド・ストーンもあるし、回転寿司やもあるし、至れり尽くせりなのだ!ワールドポーターズ最高!駅近のコレットマーレに負けるな!

 

もう、THE地元が舞台になると、「女子高生とおじさんの恋愛をめぐって」という本筋をほっぽり出してしまう。許してくれ。既視感のある世界で愚直に生きる橘あきらを見て、先天性になれない女子高生としての横浜を追体験できるのだ。もうこれは二度目の人生だ。高校生のときに達成できなかったことを少しでも回収できたように気がした。

 

そして、横浜の高校生たちは大人になると桜木町の向こう側の入り口にある古き良きオアシスの存在を知るのだが、それはまた別のお話。