砂ビルジャックレコード

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男も惚れる尻を持つ男・桃李(『娼年』観たマン)

娼年』を観た。

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 一昨年に舞台で観た『娼年』が映画化されるというので観に行った。舞台はR-15だったが、劇場版はR-18。20世紀に生まれたことを誇りに思いつつ席についた。舞台版の感想をこのブログに書いているので、よろしければ是非。

takano.hateblo.jp

 

劇場版だからといってストーリーに大きな変化はない。松坂桃李演じる大学生の領が、娼夫となり、様々な性癖を持つ女性客の欲望を満たしていきつつ、成長していく物語だ。性という切り口において、ひたすら女性の願いを受容する領は、そのキャパシティを「普通」と表現していたが、性癖における「普通」の異質さによって彼は看板娼夫へと駆け上がっていく。

 

舞台版との違いでいえば、(当たり前かもしれないが)生々しさが失われていることだ。目の前で男女が混じり合う。具体的に例えるならハプニングバー的な、もう少し近づけば獣の匂いがしそうな空間に比べれば、何か非現実的に感じる。ただ、官能的な美しさでは劇場版であろう。東京の洗練された内装の部屋で、共通の目的を貪り合う2人にじっと息を呑む。

 

そして舞台版では観れなかった彼らの恍惚の肉体や表情も光っている。桃李の、えげつなく仕上がった最強の尻が揺れているのを大画面で眺めている私たち。あんな尻になるためにはどうトレーニングしたらいいのだろうか。永遠にスクワット?馬みたいに歩く?ただ尻を蹴られる?とにもかくにも男も惚れる尻を持つ男・松坂桃李

 

面白かったのは、ややドン引くほどの性癖を持った依頼者が登場すると、決まって客席の誰かが物を落とすのだ。携帯のようなものが落ちる音。カバンが落ちる音。これはおそらく私が観た回だけではないはず。明らかに動揺する人が出てくるので、そこもチェックしていただきたい。

 

ただ、人間とは賢いもので、何回も“変態”的な依頼者を観ていると慣れてくる。なんだかその各々の性のかたちが面白くなってくるのだ。「ほう、あなたはそんなものをお持ちで」と興味の塊としてキラキラ輝き出す。その性の解放っぷりにクスッとしてしまうと同時に、どこかその状態にたどり着きたい自分がいるのも事実だ。依頼者として西岡徳馬が登場するのだが、短時間で圧倒的なインパクトを残すので刮目せよ。そして、あなたはこうつぶやくだろう。「ねえ徳馬、その眼鏡チョイスする?」