砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

必死に老いてやる(『幸せなひとりぼっち』観たマン)

『幸せなひとりぼっち』を観た。

 


不機嫌じいさんが…!映画『幸せなひとりぼっち』予告編

 

とにもかくにも、この邦題に心を奪われてしまったために観に行くことを決意した。ひとりで映画を観に行く(もはや最近では友人や恋人と映画館に行くということが無理になってきたほどである)ことや、ふらっと街を歩くことが大好きな私にとっては、避けようにも避けられないタイトルなのである。果たして、『幸せなひとりぼっち』とは私とそれほど変わっていない人間なのか、それとも全く違うのか、私が“不幸なひとりぼっち”である可能性も十二分に残しつつ上映がはじまった。

 

主人公は妻を亡くし、ひとりぼっちになってしまった頑固なおじいちゃん(といっても59歳!)のオーヴェ。会社もクビになってしまい、絶望した彼は(どうでもいいけど、さっき『彼』と打とうとしたら、『枯れ』と変換されて、そっちでも不都合ではないなと感じた)自らの命を絶とうとする。が、彼の住むコミュニティにバイタリティ溢れるパルヴァネ一家が引っ越してきて。。。。というお話。

 

主人公と異なる世界から新たな登場人物がやってきて、彼の生活を良くも悪くもかき乱すというゴリゴリのコメディかと思いきや、オーヴェの人生が想像以上のハードモード。彼の愛した人たちと多くの悲しみが、随所に回想シーンとなって我々に提示されるのだが、とてもいたたまれない気持ちになってくる。人に歴史あり。

 

今の言葉でいえば“老害”というレッテルを貼られるであろうオーヴェは、しかし、頑固で無感情に見える中にも、その奥の奥にある人間としての温かみが光る場面があり、なんだかニヤリとしてしまう。人と繋がって生きることはやっぱり重要。

 

帰り道の電車の中で、きっと向かいの席で険しい顔をしているおじいちゃんも、波乱万丈があって、誰かと助け合って生きていたんだよなあと私の心が勝手にほっこり。この映画を観た後に、不思議と老いることが少し怖くなくなったのだ。必死に老いていれば幸せが舞い込んでくる気がする。でも、そろそろふたりぼっちで冬も味わいたいなあなんて思ってたりするんですよ、ええ。