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『リリーのすべて』観たマン

『リリーのすべて』を観た。

 


映画『リリーのすべて』予告編

 

自分がまだ幼い頃、「4月4日は雛祭りとこどもの日の間だから“オカマの日”だ!」なんてジョークに笑った記憶があるなと「リリーのすべて」を見てふと思い出した。そういえば最近、“オカマの日”のジョークを聞くことはなくなった。今の子供たちはこの“オカマの日”の話は知っているのだろうか。4月4日を調べてみたら今は“トランスジェンダーの日”として制定されているみたいだ。LGBTをテーマにした映画も多くなってきているし、確実に性に対する世間の認識が寛容になりつつあるが、ここ数年の話である。「リリーのすべて」の時代設定である1920年代のLGBTへの世間の認識はどういうものか正確にはわからないが、この映画での背景を感じ取る限り、寛容されるものではなかったであろう。

 

世界で初めて男性から女性になろうとした画家と、その決意を愛を持って支える妻の話は、画家のアイナーが自らの内面に眠る女性性に気づいた時から徐々に動き出す。ストッキングやヒールの肌触りに何かを感じるところからだんだんエスカレートしていくのだが、今でも“衣”に関して女性だけ着用するものは多い。例えばスカート。私はスカートを日常生活の衣装として履いたことがないのだが、あれってどういう気持ちなのだろうか。風通しを全く予想できないのだ。人間を立方体で考えれば、地面につく部分が無いわけで。なにかしらのインシデントが起きそうで堂々と歩いていられない。ただ、履いてみたい気持ちは常にある。めくられたい願望もあるっちゃある。男は、女性に対して未知なる憧れがあるのだ。

 

そして、なんといっても、主役のエディ・レッドメインの演技力がすごい!その“衣”の部分からメイク、完璧な女装、男性の感触…と女性としての喜びを知るにつれて変化する男性から女性へのグラデーションが繊細で美しい。実写版エンポリオ・イワンコフはエディで決まりだ。