砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

M-1グランプリ2015の感想について書かせてください

5年ぶりのM-1グランプリということで、なんだかんだ言いながらこの日を楽しみにしておりました。まず、結成が15年以内に拡大されたことに驚き、そして直前に発表された審査員が過去のチャンピオンがつとめるという仕掛け。これはきっとキングオブコントの審査員に対抗してのものだったのではないかな。(で、あれば結成10年以内のままの方が良かった気がするんだけども)とにかくKOCも、M-1も新たなチャレンジをした今年はテレビ賞レースのひとつのポイントであり、笑いの流れを次の時代に進めようとする気持ちが伝わってくる。

 

今年のM-1、過去と違ってお祭りとしての度合いが強くなった。5年前はもっとアスリート的な大会でヒリヒリしてた印象がある。5年ぶりの開催で渇望してた部分もあるし、漫才賞コンテストがひとつの文化として根付いたということなんだろうか。もしくはM-1空白の時期に年間最大のイベントであったTHE MANZAIの持つお祭り感の流れがいい意味で継承されたか。過去よりもなんだかリラックスした気持ちで楽しむことが出来た。

 

それと驚いたのが、煽りVが全く無くなっていたことだ。個人的に芸人の苦労や歴史など情に訴えるのってなんだかネタを見る上で邪魔な要素だなあと思っていた。先入観を与えずに純粋に漫才の内容で勝負させる、判断させるというのはすごく見やすかった。

 

 1,2番は本当に順番の不運というか、順番が後半で笑い疲れかけた時に出てきたら3組まで残ってたんじゃないかなあ。メイプル超合金はコンビネーションは無いけども一発一発のボケが重くて癖になるし、馬鹿よ貴方はの世界観はやっぱり引き込まれる。この1,2番の審査結果待ちの時に、ふと頭を抱える中田カウス師匠を妄想してしまった。一世代上の審査員であれば、どう点数をつけてたのだろう。

 

スーパーマラドーナ、和牛のネタは構成がしっかりしていて唸ってしまった。スーパーマラドーナのこれぞ4分!な展開最高だった。あの変化球2組の後でやりにくかっただろうに。和牛の2人の演技力はすごい。ネチネチネチネチ論理的に突っつく男脳な漫才にシビレた。しかし2人はコントでも見たいなあ。個人的に優勝予想していたんだが残念。

 

ジャルジャルはメタ漫才なイメージだったんだけども、見事にコントと漫才の間を見つけたというか、メタと感じさせない漫才で1回目1位だったのは納得した。ただ、あれツッコミのタイミングがすごい難しいネタなんだと思う。観客が「これはズレを指摘しあう漫才だ」と認識しだすので、3回同じことをする→ツッコむの定石を2回に減らしてテンポを上げてはいたけれども、どこかで客は間違い探ししちゃってるんだよね。あれを1回間違えただけでツッコむと、ついていけないお客さん出てきちゃうし非常に繊細ですよね。

 

銀シャリは安定の言葉選び。ツッコミのワードは天下一品だなあ。題材は古いがそれをしっかり自分のものにしているネオクラシカルスタイル。10分やら20分やら長く見ていたいなあと思ってきたけどもきっちり4分に収めるうまさ。「ベルリンの!?」は真似したくなる今年のM-1流行語。ジャルジャルのあとの銀シャリなので、思わず「銀シャリやないか!」と思ってしまった。

 

ハライチはなんだか2人ともふわふわしていた。面白いんだけども点数が伸びない漫才というか。ボケのサイコっぷりはすごい好きなんだけども、前半にもっとサイコなキャラが出てきちゃったしなあ。でも新たなハライチを垣間見たというか、澤部さんの泣きツッコミ、いいなあ。タイムマシーン3号は、言葉遊びがしっかりしていたし、漫才の流れを客に染み込ませたうえで「ガーリガリガリ」だけで転調させたのは凄い構成だと思う。(今日一番の感動ポイント)自分の中では1回目で一番面白かった。点数伸びなかったのは審査員的には単純にダジャレ的なネタに見えたからなのだろうか。

 

トレンディエンジェルはベースは完成しているから、それをどう時事ネタにアジャストしていくかという感じだったね。固く勝ちに来た漫才。敗者復活での勢いもあって最後まですすんだ印象。何回かトレンディエンジェルのネタを見たことがあるひとには物足りなく映ったんじゃないかなあ(かくいう私がそのひとりで新しい仕込みが見たかった。)最終決戦進出した3組の中で一番キャッチーで笑いの射程範囲が広かったのが勝因だったのではないかと。

 

それにしても敗者復活で久しぶりにダイアンとかPOISON GIRL BANDとろサーモンの漫才が見れたのがすごい嬉しかったなあ。ああこういう実力者たちが陽の目を浴びないのが本当に心苦しい。結成15〜20年目を対象にしたM-2グランプリとかやってくれないだろうか。