思わず「えー!」と心のなかで言ってしまった出来事がある。
駅に着いて出口へ向かう途中、自分の目の前で駅員さんがおもいっきり改札に引っかかったのである。今まで駅員さんという人種は改札に引っかからない特殊能力を持っていると思いこんでいたのでショックがでかかった。河童の川流れ、弘法も筆の誤り、駅員もピンポーンである。
その駅員さんだが、どうやらタッチするカードを間違えてたようで、その後バタバタしつつも改札を通っていた。なんだかほっとする自分。きっとその日の職務を終えて気を抜いたためにカードを間違えたのだろう。と、自分で結論づけた。
駅員さんに改札を華麗に通過するというイメージも持っていたのは、ロマンがふんだんに詰まっている職業だからだと思う。そのロマンの80%を占めているのがあの大きいかばんだ。ホームで目の前を駅員さんが通るたびいつも思う。一体、あのかばんの中にはどんなものが入っているのだろう。時刻表とかはもちろん入っていると思うが、書類だけであの厚みのあるかばんを使うだろうか。とはいえ、そこまで重い物は入っていなさそうだ。
ということは、答えはあれしかない。これは、あくまで推測かつ希望かつ思いつきかつロマンなのだが、あのかばんの中にはプラレールが入っているのだ。お気に入りの車両にまっすぐの線路、カーブの線路、陸橋、トンネル、踏切のパーツ。もちろん予備の電池も。
そのプラレールセットを休憩中に組み立てては仲間と談笑するのだ。「このカーブ、あそこの区間を意識したんだけどどう?」「またトンネル設置するのかよ!」「うわあ、いい線路だなあ。うちの車両走らすのもったいないよ」JR職員が私鉄車両でキャッキャッするのも見てみたい。
ということを頭の中で考えながら、大きなかばんを持った駅員さんの顔を見ると、心なしか微笑んでいる気がする。「今日は田舎っぽい路線にしよう」とか考えてたら最高だ。
流行りものに目のない駅員もいるだろう。「仕事終わったー!そういえば今日新作が発売されるんだった。お店が開いているうちに買って明日自慢するぞ!急がなきゃ!」
ピンポーン
ああ、だから改札で引っかかったのか。