砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

ロンドン降臨記2

ロンドン滞在2日目のスタート。朝から行動したい気持ちとは裏腹に、体と心は一致しないようで、だいぶ長い眠りについてしまった。前日の飛行機移動で消耗していたのだろう。結局、11時頃に市街へ繰り出した。

 

最初の目的地は、大英博物館だ。実にイギリス観光らしいことをしている。地下鉄を乗り継いで、最寄りの駅へ向かう。ロンドンの地下鉄の車内はとても狭い。席の両側に人が座っていれば、足がぶつかりそうになり、間を通るにも一苦労だ。うーん、たしかに"Tube"と称したくなる。出来れば見知らぬ追っ手を撒きたくなる。

 

話は反れたが、大英博物館に到着。それにしても、なんという広さだこの博物館は。これだけの人がいるのにも関わらず、窮屈さを感じない。逆Tubeだ。広くても見知らぬ追っ手から逃げたくなる。異国の風景がそうさせるのか?入口近くのロゼッタストーンは一番人気で、ずっと人だかりが出来ていた。おみやげコーナーのロゼッタストーン推しに少し気圧される。

 

この博物館には何点展示されているのだろうか。いわば人類の文化が、エジプトからギリシャから、ほぼ全て詰まった空間だから、数時間でめぐることが間違いであった。端から端まで見るのは無理だと気づき、なにかひとつだけでも心に残ったものを見つけたら帰ろうと徘徊していたところ、北極圏の狩猟民族の暮らしを紹介したコーナーで、透明なパーカーを見つけた。古びたレインコートのようなパーカーは、 セイウチなどの動物の腸で出来ているそうだ。主に綿かポリエステルしか着ていない私にとって、この異民族の生活の中にある美しさに見とれてしまった。機能着としてのパーカーへの愛が高まった。

 

そのあとは、ミュージアムの梯子を敢行だ。教養力高めの観光だ。ケンジントンにあるデザイン・ミュージアムへ向かう。スタンリー・キューブリック展をやっているという情報を手に入れて駆けつけた。全てのキューブリック作品は制覇していないけれど、日本でこの特別展をまだやっていないというのだから、行かない理由はない。(そのために、『2001年宇宙の旅』をあらかじめスマホにダウンロードして、行きの飛行機でチェックしていた)

 

チケットを買って、特別展の中へ。まずは、仕事現場など、彼の映画制作に対するこだわりを知れたり、初期の作品が観覧できるゾーンへ。手書きのメモや台本などから半永久的に出続ける熱意を、煙のように浴びる。

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各作品のポスターが、大小さまざま壁一面に並べられている。こういう空間を作って、そこの維持費を”家賃”と呼ぶような生活に憧れる。

 

彼の人となりを知ったあとは、各映画ごとのブースが続く。各ブースは、それぞれの映画をイメージした色ごとで区切られていて、イッツ・ア・スモールワールドみたいなワクワク感がある。各映画の印象的なシーンに、メイキング映像、そして、目に焼き付いて離れないアイテムの数々が展示されている。興奮したのはシャイニングのゾーンで、真っ赤な壁にあの斧が突き刺さっているではないか!思わず顔がジャック・ニコルソンになる。

 

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飛行機の中で見ていたから『2001年宇宙の旅』のコーナーは、感動が瑞々しい。冒頭のシーケンスの猿の着ぐるみに、宇宙船の内観、そして、なんてったってHALが私達を待ち構えている。

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地元のキューブリックファンが、HALを色んな角度から、色んな表情を何十枚も撮っていたのが微笑ましかった。そんな風景も、カメラの向こうでHALは薄笑いながら見ているんだろうなあと邪推する。キューブリック展を出ると、おみやげコーナーがあって、しっかりと"COMPUTER MALFUNCTION"と書かれたTシャツを購入。こいつはいい買い物だ。

 

この映画熱が冷めやらぬままに、いつか行きたかった”聖地”へ向かった。

 

続きます。