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もうひとつの1969年8月9日(『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』観たマン)

  『チャーリー・セズ/マンソンの女たち』を観た。

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が楽しみだった私は、8月にシネマカリテで上映していたこの作品を予習として見に行っていた。我ながら良い努力のかけ方だと思う。

 

『OUATIH』では、チャールズ・ファミリーについて深い言及はされておらず、謎のカルト教信者たち、映画スタジオに集団で住んでいるヒッピーたちという描写だ。チャールズ・マンソンという男を知らない観客の中には、彼がこの作品に登場してたことさえも気づかない人がいるのではないだろうか。『チャーリー・セズ』は、このチャールズ・マンソンや、その集団にスポットを当てた話となっている。チャールズ・マンソンという男の人となりや、なぜ、チャールズ・ファミリーがロマン・ポランスキー宅に侵入し、シャロン・テートの殺害に及んだのか、別の角度から見た1969年8月9日までのストーリーが描かれていく。

 

主人公は、チャールズ・ファミリーの女性たち3人だ。彼に洗脳され、やがて凶行を犯した彼女たちは女子刑務所に収監される。その刑務所内で講義を行う大学教授カーリーンとのふれあいを通じて、彼女たち、ファミリーの暮らしぶりが回想シーンで明らかになっていく。

 

当時の事件から時間が経ったからか、悪のカリスマとして見られるチャールズ・マンソンだが、本作では、ロックスターを夢見る女性蔑視の激しい誇大妄想者として表現されている。デモテープを送ったり、プロデューサーを自分のコミューンに呼んで一曲披露したり(バックコーラスはチャーリーガールズだ)するシーンは、まだ許せるのだが、ビートルズの「ヘルター・スケルター」を世界終末を予言する曲だと言い始めたり、ガールズにDVしたりと、見てるこちらでさえ地獄のような空間を味わわされる。

 

ちなみにチャールズの作った音が気になって検索してみたら、Spotifyでアルバムが配信されていた。終身刑者の音楽が聞けるのに電気グルーヴが聞けないのはおかしい。復活してくれ。

 

彼女らも、そして観客も、チャールズ・マンソンに翻弄されつつ、やがて、この作品でもあの日を迎える。1969年8月9日の「シャロン・テート殺害事件」だ。テキストを読むだけで寒気がするこの事件が再現されるおぞましさと、この目で確かめたい卑しい興味を持った僕がいた。

 

最後に。「衝撃の実話が映画化」という触れ込みの作品が最近多すぎると思う。ただ淡々と、嘘のようでホントの話を映像化しているだけでは、それは世界仰天ニュースだ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』も『チャーリー・セズ』も実際に起きた惨劇がベースの映画だが、一部はフィクションになっている。そのフィクションが、この事件に巻き込まれた女性たちへの"救い"と感じ取れる瞬間になっている。それほどまでに、「シャロン・テート殺害事件」は目を覆いたくなる悲しい史実なのだ。

 

takano.hateblo.jp