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真夏への勝ち方(『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』観たマン)

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を観た。

 

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あっという間に梅雨が開けてしまってとうとう真夏がやってくる。真夏に必要なもの、それはアイスクリームだ。真夏にロマンなんていらない。絶え間なく鳴くセミと照りつける太陽に勝つ術はアイスクリームだけなのだ。剣のようにアイスバーを持ち、盾のようにアイスカップを掴む。ガリガリ君なら分厚いから両方使える。コスパがいい。

 

アイスがとっても美味しそうな映画を観た。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』だ。作中に出てくる子役の二人がひとつのソフトクリームをシェアするシーンがあるのだが、本当に欲の満たし方として美しい。同じような状況の大人は、間接キスとか他人の唾液とかどうしても社会衛生的な考慮が入ってしまい、ソフトクリームを順番に舐める行為に抵抗が生まれ、アイスを楽しむ欲望が負けてしまう。その大人の目線を知らない子どもたちの真夏への抵抗に、憧れを抱いてしまう。

 

フロリダのディズニーランドの近くにある安モーテルが舞台の物語で主人公となるのがヘイリーとムーニーの母娘だ。ムーニーの目線(子)とヘイリーの目線(親)で見たそれぞれの生活が混じり合って、この安モーテルが魔法の建物と化す。さきほどのアイスは子の目線で描かれているし、成長期を迎える前に駆け抜けた夏休みの風景を思い出させるような映像表現になっている。子供のときの無敵モードをもっと堪能すべきだったな。

 

一方、親目線はなにかとしんどい。ヘイリーは親ではあるが、未熟な性格で社会に馴染めないタイプ。仕事も見つからず、グレーゾーンな収入でなんとかムーニーを養っている。悪い頭を必死に使ってお金を稼ぎ、ムーニーに愛を注ぐ姿は何とも言えない。社会の外側に弾かれても、なんとか生き抜こうとする人たちは実際にいるのだ。その母娘を優しく見守っているのがモーテルの管理人であるボビーである。もうこのボビーが肝っ玉親父!社会的立場をとりながら、ヘイリーのことを気にかけるボビーにウルウル。社会と人情に板挟みされる人間の苦悩も描いている。

 

とにかく見てほしいのはこの物語の結末である。ヘイリーとムーニーはある事件に巻き込まれるのだが、その最後の最後でムーニーが取った行動に少し泣いてしまった。あんなに無邪気に遊んでいたムーニーの決意とは。アイスクリームが溶けたとき、それは子供から大人になる第一歩なのかもしれない。