砂ビルジャックレコード

カルチャーの住民になりたい

『娼年』について書かせてください

Twitter上で、評判がとてつもなかった『娼年』がどうしても気になっていた、ココ最近。どうやら当日券が多少出るとの情報を聞きつけ、その日の勢いで東京芸術劇場へ足を運んだ。脚本と演出が『愛の渦』でおなじみの三浦大輔でまさかのR−15指定。プラス前述のTwitter情報で私の好奇心はぐんぐん上昇する。

 

到着した私は、性の入れ物のような状態で当日券を求める列に並ぶ。当日券は抽選方式で、購入できるチケットは立ち見の60枚程度。1〜60までの数字を引けば間違いなく鑑賞することができる。それに対して列はおよそ250人。4分の1の確率で当たりの計算だ。200番目ぐらいに私にくじを引く順番が回ってきた。何にも考えずに、くじを引く。

 

 

 

 

 まさかの1番!!

 

 

 

 

 

 

いろいろな好奇心が呼びこんだ勝利。せっかくの自分の人生だから、正直に生きたもん勝ちということに気付かされる。と、落ち着いた文調で書いているが、内心はぶるぶる震えていたし、厳かな東京芸術劇場で大声で「おおおおおおおお!」って叫びたかったよ。そんなわけで、衝撃の舞台を観てきたので書かせてください。

 

立見席なので通常の席の後ろにある手すりにもたれて、端っこの方から観劇。舞台は2階構造で、2階から1階の方へまっすぐ階段が貫かれている。その階段の先には、せり出したラブホテルのセットがある。ベッドは三方を客席に囲まれていて、最前列は目と鼻の先にベッドがあるという状態で、プロレスのリングサイドのような臨場感がありそうだ。

 

松坂桃李演じる、無気力な大学生の領は、バイト先のバーで、静香(高岡早紀)に出会い“ボーイズクラブ”のメンバーとなる。娼夫となり、様々な女性の欲望を満たすことで、人間として成長していく物語。そこで、老若限らず女性と対峙する領、もとい松坂桃李は、まるでステージ制のアクションゲームで動く主人公のようである。

 

この舞台を見るにあたって、我々の集中力は、もちろん前方のベッドに注がれる。様々な性癖を持つ女性を演じる、女優陣たちの魂のパフォーマンスに息を飲む。例えば、静寂の中で唯一聞こえる大音量の喘ぎ声は、罪悪感を感じてしまった。そして、ひたすらベッドシーンを演じる松坂桃李の体力と俳優としての生き様。ベッドの上で桃李の尻が揺れる揺れる。その美しさにおっさんだって時を忘れる。

 

 

性とはオーダーメイドではないだろうか。型なんてないし、正解(正解・不正解という区切り方自体間違っているかも)なんてない。そういうものだからこそ、他人に合わせる必要があるし、他人のものが気になってしまう。舞台終了後の帰り道、この舞台を見ていた他の客も自分と同じ、性の入れ物だということに気がついてなんだかホッとした。

 

間違いなく自分の人生に影響を与える舞台だ。恐るべき熱量に打ちのめされてしまった。もうこれで多少の物事には動じなくなるんじゃないだろうか。1番のくじを引かせてくれた神様に感謝。