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地球で目覚めてよかった(『パッセンジャー』観たマン)

映画観たマン

パッセンジャー』を観た。

www.youtube.com

  

2017年になって、科学の進歩により宇宙は身近になった。とは言うものの、主に東京の一路線を行ったり来たりしながらお金を稼いでいる私にとっては、全くそんな雰囲気がない。望遠鏡も持ってないし、東京は眩しすぎて夜になっても星も見えない。逆に遠い存在なのかもしれない。

 

民間人による宇宙旅行のニュースに、最初はわくわくしたが、まだ、限られたものしか体験できない状況に興奮も冷めてきた。果たして、残りの人生で私は宇宙旅行を経験できるのだろうか?

 

映画も、科学の進歩により、宇宙を舞台にした映画が増えてきた(ような気がする)。そして、宇宙映画も「宇宙で冒険する」夢物語的、異世界的な物語というよりは、「宇宙を開拓する」や「宇宙で生き残る」という、比較的現実的なものが増えてきた。

 

世界の情報がほぼ一瞬で手に入れられる時代に我々は、開拓し飽きた、生活しやすい地球ではなく、宇宙にロマンを求めだすのである。

 

この『パッセンジャー』も、「宇宙開拓」系の映画である。地球から120年離れた星を目指した移民船の中で、冬眠装置の故障により、ある男が、到着より90年も早く目覚めてしまったことから物語が始まる。

 

「早起きは三文の徳」というが、この宇宙船では「早起きは孤独死のはじまり」だ。ひとり空虚な宇宙船内をさまよう男は、やがてもうひとり早く目覚めてしまう女と出会う。しかし、男は女に対し、ある秘密を持っていた。 

 

突然、男に襲いかかる絶望的な状況設定に、同情してしまう。街のような大きさの宇宙船でずっとひとり。しかも、外には出れない。宇宙の無人島と化した船内には話し相手のAIはいるが、緊急事態を想定していないようで、助けを求めても、しらを切る。この人間とAIのシニカルなやり取りが、なんだか、この先に経験しそうなリアリティがある。

 

もしも、数十年後に、私みたいな安月給の人間でも宇宙旅行が可能な時代が来たら、行くのだろうか。臆病者だし、冬眠装置の故障で残りの人生を棒に振る可能性があるなら、地球に残留したい。

 

誰もいない朝にハッと目覚めて、人通りの少ない渋谷を歩く心地よさを知っているからには、なかなか、人生の大きな一歩を踏み出すことができない。いや、踏み出さずに地球の毛布でぐっすり寝よう。明日も地球で目覚めたい。

 

 

『花実の色』(短歌の目 第17回)

Tanka

短歌の目、今月も参加させていただきます。March!

 

tankanome.hateblo.jp

 

今回の全体的なタイトルは「花実の色」にしました。暖色をイメージできるような言葉を散りばめたつもりです。

 

 

 

 
1. 草
虞美人草の種のかたちも咲く色も読み方さえも何も知らない
 
 
 
2. あま
歯根まで意識をこめてあまおうの果肉をゆっくりかじる団欒
 
 
 
3. ぼたん
ひぼたんのようだよ今のわたくしの心は。画像検索したら?
 
 
 
4. 鳥
大柄の極楽鳥は踊りだすインパチェンスからヒントを得て
 
 
 
5. 雷
ライナスの毛布からなかなか出ない桜のつぼみを起こす蟄雷
 
 
 
テーマ詠「捨」
ちぎられた花びらひとつまたひとつ敷いたチラシにたやすく積もる
 
赤色がわずかに違うね花びらとゴシック体の98円

 

 

 

 ありがとうございました。

 

 

変態階級(『お嬢さん』観たマン)

映画観たマン

『お嬢さん』を観た。

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年をとると、刺激を求めだす。それは、映画館で見る映画を選ぶ場合にも基準のひとつになっていて、こんなにアクションやセクシーを売りにしておいて、レートが「G」だと、私の腹で眠っているマグマがうごめき出す。一方、R指定がつくと、その分、日常生活では得られない刺激的な表現を楽しむことが出来るので、期待感が高まる。今日は、刺激を求めて『お嬢さん』。お嬢さん、この映画R18+ですって。

 

時代は、1939年の日本統治時代の朝鮮。ある豪華な屋敷に住むお嬢様のもとに、新しい召使いが来ることから物語は始まる。この召使は詐欺師一味の女で、屋敷に訪れる伯爵(=正体は、詐欺仲間)と結婚させ、財産を奪う計画のために、この屋敷に侵入したのだ。ただ、お嬢様に使えるうちに心境に変化が訪れて・・・という展開である。お嬢様、召使、伯爵の“三角関係”が織りなす極限のサイコロジーに私の心はヒリヒリし続けた。

 

心を奪われたのが、舞台設定となる屋敷だ。気持ち悪いくせに息を飲むほど美しい。畳の部屋もあれば、洋風の部屋、無限に広がる書斎に、地下室もある。光と影を網羅したこの屋敷から放たれるものは、妖気と、紛うことなき変態性である。この映画、変態だ!100%変態映画だ!!

 

物語の中で、お嬢様が行う「朗読会」というものがある。このシーンは変態の極みのひとつだ。直球の単語、言葉を頼りに妄想する変態階級の男たち。しかし、そこに汚らわしさはなく、清廉さとなぜか可笑しさがこみあげてくるのはなぜなのだろう。

 

個人的に変態性の高さ(Most Impressive Hentai)を感じたのは、音である。朗読の合間に聞こえる息づかいや、作中のひとつのキーアイテムになる鈴の音。この音が静寂な映画館の中でかすかに響く。我々は、朗読会の聴衆のように、この音をきっかけに聴覚以外の感覚を自らの脳内で作り上げる。気づけば、私も立派な変態の仲間入りをしていたようだ。ゆっくり変態を開放していくことにした。